1995年の阪神大震災を機に設立された政府の地震調査研究推進本部が2009年10月に公表した資料が手元にある。庄内平野東縁断層帯南部の地震による予測震度分布。今後30年以内の発生確率が最大6%と、全国の主要断層帯の中でも高い数字を示す南部が動いた時、どれだけ揺れるのかシミュレーションしたものだ。
資料では「庄内町や鶴岡市、酒田市の一部で震度6強、庄内平野から出羽丘陵西部にかけては震度6弱」と予測したほか、「新庄盆地や秋田県にかほ市でも震度5強に見舞われる」としている。
「赤」が広がる
推進本部は、庄内平野東縁断層帯の長期評価一部改訂の発表に合わせて、一般の人に理解を深めてもらうことを目的にこの参考資料を作成した。特に注目されるのは「地盤の影響について」という項目だ。揺れの大きさは地盤によって大きく変わるとし、揺れやすさ揺れにくさをカラーで表示した。それを見ると、庄内平野一帯は最も揺れやすいことを意味する「赤」が広がっている。
「自然災害を知る・防ぐ」(古今書院)によれば、「地盤の良否を支配するのは、大局的には地層の『年齢』である」。しっかりと固まりきっていない若い地層ほど建物には不利で、1万年前以降の最も新しい地層(沖積層)の厚さが増すと被害率が急増するという。
庄内平野はまさに沖積層が厚い土地。鶴岡高専教授の沢祥は「庄内平野は東西圧縮の影響を受けて、平野の底が下がり続けている。それゆえ、河川がいくら大量の堆積物を運んできても埋め尽くされない」と話す。
揺れやすさは、液状化という厄介な被害も引き起こす。地震時に地下水が上昇し地上に砂や地下水が噴出、地盤が緩んで建物の沈下、傾斜などを生む現象。
建設省(当時)酒田工事事務所が1982(昭和57)年に発行した「庄内平野水害・地盤液状化予測地形分類図」では、過去の液状化被害地点を詳細に書き記している。同図によると、1804(文化元)年に発生した象潟地震では「酒田郡は千軒余震崩し(略)四五尺程宛地割ける。其口より泥を吹揚、五尺余深き泥海とな」った。1894(明治27)年の庄内地震でも広範囲で水が噴き出たほか、1964(昭和39)年の新潟地震では庄内平野でも随所に液状化現象が発生し、家屋に大きな被害をもたらしたりした。
特徴は「一度被害を受けた場所では繰り返し発生している」ということだ。「液状化は庄内平野すべてで発生しやすいわけではない」と沢。「例えば砂丘や河川の近くなど、地下水位が高い場所が要注意」。実際、液状化予測地形分類図を見ると、庄内砂丘や最上川周辺に被害が集中している様子が分かる。
歴史知り対策
危険な場所には住まない。発生したら素早く避難する。非常食を準備したり家具を固定したりする。地震被害に遭わないための対策はこうした「避ける、逃げる、備える-の3点に尽きる」と沢は強調する。
そのためにはまず過去の歴史を知ることが大事だ。自分が住んでいる場所や、これから住もうとする場所の災害履歴を知る。過去に学び、現実を直視する。すべてはそこから始まる。=敬称略
新潟地震で寸断された酒田市の国道47号。庄内平野は全体的に揺れやすいと考えられている(写真集「やまがた100年」から)
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