多くの自治体で大雨・洪水両注意報発令の基準となり、気象庁が「激しい雨(バケツをひっくり返したように降る雨)」と定める1時間当たり約40ミリの降雨量に対応できる河川の県内整備率は、2013年3月末現在で41.4%となっている。東北地方の平均は42%で、ほぼ平均値だ。
河川整備は主にダム建設をはじめとする「貯留施設」、築堤などの「現川拡幅」、新たな川などを造る「分水施設」に分けられる。県は整備率の目標値を設定していないが、09年に策定した「やまがた水害・土砂災害対策中期計画」では、水害からの保全人口を15万6千人(09年度)から16万4千人(18年度)に拡大することを目指している。
先行き不透明に
県内のダムで現在、事業が進んでいるのは、最上町の赤倉温泉上流に建設予定の最上小国川ダムだけだ。
同ダムをめぐっては1987(昭和62)年9月、度重なる洪水被害を受け、最上町がダムによる治水対策を県に要望したことから計画が持ち上がった。県は91年に予備調査を始め、06年11月に平常時は水をためない「流水型ダム(穴あきダム)」による建設を決定。09年の政権交代に伴う政策転換で事業が検証対象とされたが、県が有識者らの提言を踏まえて再検証した結果、11年2月に「ダム案が最良」との対応方針を決定。同年9月に用地測量などに着手した。
県は13年度、工事用道路と仮排水トンネルの整備、ダム本体部分(国有地)と上流側の用地取得を計画。14年度は最上小国川本流を締め切って、現在施工中の仮設備(トンネル)に水流を迂回(うかい)させるための経費、環境モニタリング調査を継続するための費用を予算要求している。
だが、流域の漁業権を持つ小国川漁協との本格的な話し合いがようやく始まろうかという段階で、自然保護団体も計画に対して反発を強めている。事業の先行きは不透明なままだ。
昨年7月8日の豪雨で、同ダム建設予定地周辺で降った雨の量は最上町赤倉で1時間当たり39ミリ。総雨量は5時間で113ミリに上り、最上小国川では氾濫危険水位(1.5メートル)に迫る1.31メートルを記録した。行政側がダムの治水効果を示す一方で、自然保護団体の関係者からは「アユの好適な生息場、清透な流水景観などの環境悪化を起こす可能性は否定できない」といった意見が寄せられる。
洪水で氾濫した最上小国川。ダムによる治水対策が効果的なのかそうではないのか。明確な議論が求められる=2006年12月、最上町
近く協議本格化
県と小国川漁協は近く、協議を本格化させる予定だが、自然保護団体を含め、これまでの議論はそれぞれが異なる価値観を誇示し続けただけとの印象もある。
しっかりとした根拠に基づく生態系への影響について、県は漁協に説明することが求められるとともに、住民の安全安心を確保するため、一刻も早く最上小国川の治水対策に道筋を付ける責務がある。地域と住民のため、漁協と自然保護団体は行政と共により良い方向を模索していく責任が課せられる。地域の明るい未来を切り開くためには、双方の協力が不可欠だ。
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