自治体間の温度差(下) 在来線の運行どうなる~山形にフル規格新幹線を|山形新聞

山形にフル規格新幹線を

自治体間の温度差(下) 在来線の運行どうなる

2017/2/18 10:52
県内自治体は山形新幹線のフル規格化に賛同するものの、同盟組織は三つにとどまる=東根市・JRさくらんぼ東根駅付近

 フル規格の奥羽、羽越両新幹線を巡っては、県と市町村、経済界で構成する県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟が昨年5月に発足し、山形、秋田、福島、新潟4県の知事、副知事が実現に向けた連携強化で一致した。奥羽新幹線は福島―秋田間を結び、県庁所在市・山形市を経由する。現在の「基本計画」から「整備計画」に格上げするためには県民の機運醸成が不可欠―と、県は市町村・地域レベルの同盟組織を求めているが、県内沿線自治体が独自の同盟組織に向かうかは不透明だ。

 吉村美栄子知事は先の知事選の告示日(1月5日)、山形市役所前で第一声を上げた際、「山形市長さん、聞いていたなら一緒に頑張りたい」とマイク越しにアピール。フル規格に向けた連携を呼び掛けた。この日の年頭記者会見で佐藤孝弘市長は「大きなメリットがあり、ぜひ実現したい」とフル規格への期待感を示し「市単位としても運動しなければならないと思う」と語った。

 今月16日の記者会見で佐藤市長は「県の同盟の中で働き掛けていきたい」と述べ、県内自治体、経済界による“オール山形”の同盟を前面に押し出した運動が実現可能性を高めるとの認識を示した。さらに市の重要事業要望の中でフル規格化を関係機関に働き掛けていることなどを念頭に、市独自の要望活動をさらに展開する考えを説明した。一方で山形市の同盟結成が他組織との相乗効果を生み出す可能性については「効果を見極めないといけない」と述べた。

 県内で昨年以降に発足した同盟組織は、県の実現同盟を含め米沢市、庄内地区の3組織にとどまっている。フル規格新幹線は運休・遅延要因となっている福島県境部の課題解消などにつながり、各自治体は運動推進に賛同するが、通過駅などさまざまな不安も抱える。

 南陽市の白岩孝夫市長はフル規格への理解を示した上で、市のまちづくりと観光振興、地域経済活性化といった山形新幹線の恩恵に言及し「新幹線が停車するというアピールポイントがなくなるだけでなく、在来線も運営、運行面で維持されなくなるのでは」と通過駅や通勤通学などへの影響を懸念する。新庄市の山尾順紀市長は大都市に人や資本が流出するストロー現象のほか、山形新幹線新庄延伸の際、施設整備費負担で財政健全化に苦労したとし「フル規格実現には相当の知恵を絞らなければならない」と指摘する。

 酒田市は、山形新幹線で米沢―庄内間がつながる県土軸の形成と県内4ブロックの一体感醸成などを訴え、山形新幹線庄内延伸を推進する。フル規格も支持するが、庄内延伸は短期間、低予算でできるとし「庄内延伸で県全体の鉄道利用者を増やすことが、板谷峠(米沢市)にトンネルを新設する力、フル規格化を実現する力になるのではないか」(市担当者)と話す。

 酒田市などが15日に開催した鉄道高速化講演会では、在来線の軌道や車両改良などで運行速度を上げる「中速鉄道」によって、庄内―山形間の所要時間を50分、庄内―東京間を2時間半に短縮できるとの新たな整備手法が提案された。丸山至市長は「中速鉄道」は山形市や米沢市にもメリットがあるとし「選択肢の一つとして国や県、JR東日本にも知ってほしい」としている。

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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