やまがた観光復興元年

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やまがた観光復興元年

第5部・結ぶ[5] 北村山・そば三街道(上)

2014/6/3 08:57
県内外の観光客でにぎわった昨年7月の「そばの里まつり」。そば街道の各店は競い、協力し合いながら魅力を高めてきた=尾花沢市・徳良湖温泉花笠の湯

 太さ、硬さ、つゆ―。その人その人で好みが分かれる食が、そばだ。年間50万人以上が訪れる北村山地域の「おくのほそ道最上川そば三街道」。名を連ねる39店のそばは品種だけでなく、打ち方、太さ、もてなし方もさまざま。そのこだわりが多種多様なニーズに応え、北村山に行けば誰でも好みのそばに出合えると受け入れられてきた。

 三街道を象徴するイベントが、2市1町が持ち回りで開催する「そばの里まつり」だ。8回目を迎えた昨年は尾花沢市で開かれ、約500人のそばファンらでにぎわった。その魅力は何と言っても一度に三街道自慢の味が楽しめること。そばは競うように同じ盆に盛って提供され、香りや喉越しなどを比べることができる。宮城県大崎市から来た男性は「どのそばも個性があっておいしいし、一緒に食べられるのがうれしい。ぜひ仙台でも開催してほしい」と喜んだ。

 「連携」によりPR面で大きな成果を生んだ三街道。「そばどころ山形」をけん引し続ける最大の力は、三つの街道、そして所属する個性豊かな39のそば店が互いをライバルと認めた上で刺激し合う「競争」がある。それぞれの店主は切磋琢磨(せっさたくま)しながら、北村山地域のそばのレベルを高めている。

 北村山地域で各そば街道の看板を掲げるための条件は厳しい。尾花沢市の「おくのほそ道尾花沢そば街道」は市内産の「最上早生」を使うこと、大石田町の「大石田そば街道」は手打ち、村山市の「最上川三難所そば街道」は地元産の「でわかおり」を使っての手打ちが求められる。いずれも各街道が「売り」にしているこだわりだ。三つの街道は、隣のライバルを常に意識しながら、その「売り」を磨いている。

そば粉を使った新メニュー作りに取り組む店主ら。毎年研修会を開き、技術や知識向上に努めている=尾花沢市共同福祉施設

 ■「良きライバル」

 尾花沢では、4年前から地元農家と協力し、本来の味を持つとされる最上早生の「原種」の栽培に取り組み、今シーズンからは全店舗で「原種そば」を提供する。手打ちにこだわる大石田と村山の街道は、会員同士が一堂に集まる機会を設け、そば打ちの技術を高めている。「他のそば街道の取り組みや味が気にならないと言えばうそになる」と語るのは大石田の芳賀清・前会長(64)。「だからこそ負けじと腕を磨いた。そのおかげでレベルが上がったことは紛れもない事実だ」

 「良きライバル」として、時には蓄積した技術や知識を伝え合う。「おくのほそ道最上川そば三街道」として研修会を毎年開催し、店主らがだしの取り方や、しょうゆの使い方、接客マナーなどについて学んできた。今年3月にはそば粉・ソバの実を使った新しい料理の研究をテーマに、そば粉の「ガレット」や「そばラザニア」「そばコロッケ」を作った。「会員が集まれば常にそば談議になる。同業者だけに秘密にしたい情報があるかもしれないが、みんな隠すことなく教え合う。長年培ってきた信頼関係のなせる技で、そばへ懸ける思いの熱さがそうさせる」と村山の佐藤和幸会長(52)は話す。

 「北村山にそばあり」と、三街道の旗を掲げて10年余。その名は県内外へと着実に浸透し、広がっている。しかし、三街道の高橋昭治顧問(80)はあえて厳しい言葉を送る。「三街道の看板を掲げる以上、どこか一つの店の味が落ちただけで全体の魅力が下がる。だからこそ一層の切磋琢磨(せっさたくま)が必要だ」

 ■もてなしの文化

 「北村山には田舎の雰囲気と、もてなしの文化がある。地元の人は、来客があれば古里のそばでもてなそうと店に来てくれる。地域に支えられ、これまで育ててもらってきた」と三街道の会長で、尾花沢の高橋晃治会長(62)は語る。そして「これからは恩返しも必要。そば街道という看板を生かして地域活性化にも貢献していきたい」と力を込めた。

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