「ザクッ、ザクッ」。2月上旬の晴れた土曜日、米沢市中心部の住宅街に、スコップやスノーダンプで雪をかきだす音が響いた。黙々と作業するのは山形大工学部などの学生で組織する除雪ボランティアのメンバーたちだ。
工学部生による除雪ボランティアがスタートしたのは2005年度。当初は学生サークルが行ったが、翌年度からは米沢市参与も務めていた東山禎夫(よしお)教授(66)が、自らの研究室の学生に「運動代わりにやらないか?」と持ち掛け、研究室単位を中心に活動するようになった。5年ほど前からは米沢女子短大の学生も加わっている。
活動エリアは学校から歩いて行ける範囲。事前に民生委員を通じて高齢女性や障害者など、自分で除雪が難しい世帯に希望を募り、1~2月に計5回、学生が訪問して雪を片付ける。この日は29人の学生が、登録した19軒のうち12軒で作業に汗を流した。
縁あって本県で学び、暮らす学生たちは、まちづくりや特産品開発、伝統文化の継承などと同様に、除雪という地域課題にも力を発揮している。
山形大工学部(米沢市)などの学生で組織する除雪ボランティアのリーダー磯恭平さん(23)=大学院理工学研究科1年=は栃木県大田原市の出身。雪は積もっても3センチ程度で、「雪かきなんてテレビでしか見たことがなかった。米沢に来たばかりの頃は『本当に暮らしていけるのか』とショックを受けた」と振り返る。
参加する学生は毎年、半数ほどが入れ替わるが、ほとんどは雪かき初心者だという。「作業前は『うわっ』と思うけど、どんどん片付くのが見えるので、やりがいがある」と磯さん。「『ありがとう』『助かった』という言葉が、次への力になる」という。
作業を見守っていた坂トヨ子さん(88)にとって、学生たちは孫と同年代。「都会の子みたいでスコップの扱い方も慣れていないようだけど、本当に助かっている」と目を細める。除雪ボランティアは、地域住民と学生との距離を着実に縮めてきた。
とはいえ、移動手段に課題がある学生ボランティアが力になれるのは、米沢市内の一部だけだ。市社会福祉協議会も自力での除雪が困難な世帯を対象にボランティアを派遣する制度を設けているが、本年度の派遣依頼登録は66世帯に上る。
山形大COC+推進室コーディネーターとして「雪国で考える(山形から考える)」という授業も受け持つ東山教授は「県内には大学院生も含め1万5千人ほどの学生がいる。それだけの若い人が何もしないのでは駄目。ボランティア参加の(心理的な)ハードルを下げたい」と語る。
さらに「外から人を呼ぶ除雪ボランティアは往々にしてイベント化するが、大事なのは日常化すること。大学生だけでなく、中高校生とも連携することで、もっと雪に強い地域をつくれるのではないか」とも。中高校生の除雪ボランティアは県内でも各地で行われている。これを“日常化”できれば、雪問題克服への大きな力になりそうだ。