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第2部・雪と暮らす 変わる「共助」除雪(4)

2018/2/20 09:07
除雪作業後に交流会が開かれ、地区内外からの参加者が親睦を深める=酒田市・日向コミュニティセンター

 酒田市日向地区は旧八幡町の中山間地域。鳥海山の麓に集落が散在する。玉簾の滝や登山の拠点である湯の台温泉鳥海山荘などがあり自然豊かだが、市街地に比べ雪は数段深い。

 同地区の升田、大台野両集落で先月下旬、「日向ささえあい除雪ボランティア」が行われた。日向コミュニティ振興会や市などが2012年度から年2回実施し、市内の他地区や県外からも集まって高齢者世帯などの除雪をしている。

 この日は約90人が参加。以前は小学校だった日向コミュニティセンターで事前説明を受け、準備体操をして両集落へ。雪が降り続く中、7グループに分かれ、スコップやスノーダンプを手に雪と格闘した。

 高齢化・過疎化が進むにつれ、除雪ボランティアの需要が高まっているが、人員確保に苦慮する地域も多い。そんな中、毎回多くの参加者が集まる日向地区の取り組みは庄内地方の先進例とされる。

 酒田市日向地区にある升田集落は市中心部から25キロほど離れており、車の温度計はマイナス3度まで下がった。1人暮らしの村上リツ子さん(83)方では、参加者10人が地元の会社員村上雅治さん(57)を指南役に作業に汗を流した。

 「寒波のせいで一晩にどさっと降った。除雪してもらって助かる」とリツ子さん。3回目の参加という市内の会社員小笠原健さん(38)は「同じ酒田でも街中とは雪の量が全然違う。雪の中で生活する大変さを感じる」と話す。

 大台野は升田を出て曲がりくねった道を上った所。そこで作業をしていた東北公益文科大4年谷口結万さん(22)=酒田市=も参加するのは3回目だという。「ここで会った人たちとの交流が楽しい。初回に訪ねたおばあちゃんにシイタケ茶をもらったのが思い出になった。人と出会い、お礼を言われるうれしさを実感した」と目を輝かせる。

 谷口さんら公益大の学生は地域おこし協力隊員と連携し、日向地区の地域づくりにも取り組んだ。住民との交流を深める一方、地区の魅力を紹介するツアーを企画し、除雪ボランティアに来た人たちにも参加を呼び掛けたという。

 雪がめったに降らない静岡市から昨年に続き参加した人もいた。大台野で除雪活動をした会社員加藤史佳さん(43)。「除雪の方法を教わりながらやっているが、思った以上に技術が必要でびっくりした。寒いのに汗をかくほどの重労働だし…」と息を弾ませた。

 除雪による生活支援だけでなく、地区外の人たちとの交流に力を入れているのが特徴で、リピーターも目立つ。今回も作業の後は日向コミュニティセンターで昼食交流会を開き、つきたての餅や郷土料理を味わいながら楽しい時間を過ごした。

 今月10日には今季の2回目が行われ、50人以上が参加した。「除雪はもちろん、若い人と話すのを楽しみにしているお年寄りも多い」と日向コミュニティ振興会の小松幸雄会長(66)。日向地区でのこうした活動には、雪の重圧を世代間交流や地域活性化に結び付ける手掛かりがありそうだ。

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