山形再興

第6部・スーパー公務員の力 (4)新庄市・加藤明さん

2018年06月28日
 緑に囲まれ、ケヤキ並木が木陰をつくる敷地に30もの露店が軒を連ね、幅広い世代が会話や食を楽しんでいる。欧州のマルシェ(市場)を思わせる牧歌的な異空間。「新庄市エコロジーガーデン 原蚕の杜(げんさんのもり)」で毎月第3日曜に開かれる「キトキトマルシェ」のにぎわいの光景だ。仕掛け人の一人、市総合政策課主査の加藤明さん(43)=上金沢町=は「うれしいですね」と、その眺めに目を細めた。

 手作りにこだわった農産物、加工品、雑貨、食品などを提供し、生産者と来場者が交流するキトキトマルシェは2012年7月に始まった。加藤さんは実行組織の立ち上げから携わり、敷地内にある国登録有形文化財の利活用、交流拡大の付加価値づくりなどにも奔走。県内外から年間1万人以上が訪れる人気イベントに成長させた。

 「いいパートナーに恵まれた。自分はいろいろな提案の交通整理をするだけ」。だがその交通整理の手法は鮮やかで、実行力も伴い、陰の立役者と誰もが評する。7年前、民間企業で1年間研修し、顧客第一の姿勢を学んだ。行政に置き換え“市民第一”の感覚を磨いたことが大きな強みになっている。

にぎわうキトキトマルシェを訪れ、スタッフと談笑する加藤明さん(右)=新庄市エコロジーガーデン
にぎわうキトキトマルシェを訪れ、スタッフと談笑する加藤明さん(右)=新庄市エコロジーガーデン
 「新庄市エコロジーガーデン 原蚕の杜(げんさんのもり)」は国道13号沿いの田園地帯にある。もとは旧農林省蚕糸試験場新庄支場で、市が国から跡地を譲り受け、2002年に開園させた。蚕室など昭和初期の貴重な建物群が残り、さまざまな樹木が生い茂る癒やしの空間。加藤明さん(43)に下った任務は、この施設の有効な利活用策を探り一大交流拠点にすること。商工観光課に移ったばかりの12年春の話だ。

 初年度予算は50万円ほど。まずは実行部隊が必要と感じ、「一緒に面白いことをやろう」と以前から約束していた地元のデザイナー吉野敏充さん(38)に声を掛ける。さらに若手農家団体やクラフトなどの手作り品愛好者団体の代表らに協力を求め、「エコロジーガーデン交流拡大プロジェクト実行委員会」を組織した。

 絶好のロケーションを生かし、人と人のつながりが生まれるマルシェを開催するというアイデアは早い段階で固まった。加藤さんは出店者探しに走り回り、同年7月の1回目には14の店が並んだ。建物群が登録有形文化財に指定後は建物がどこまで使え、何をしてはいけないかなど細かい確認・調整作業に当たった。敷地内の産直施設から「商売で競合してしまう」と不安を訴えられ、説得に当たったこともある。マルシェ開催日は逆に売り上げが伸びると分かり、以後は良好な協力態勢ができた。

 昨年までの6年間で延べ出店数は1340に上り、5万2千人を集客。累計売上額は約4200万円に達している。同実行委員会が国土交通省の16年度手づくり郷土(ふるさと)賞を受けた際は「歴史的建造物と地域の思いがマッチングし、日本のモデルケースになる」と講評を受けた。

 実行委の樋口修委員長(55)は「加藤さんはこれまでにいなかった行政マン。突っ走る私たちに駄目なら駄目とはっきり言い、方向が定まったら的確に誘導してくれる」と力量と人柄に絶対の信頼を置く。

 新庄市は地域課題解決に取り組む人材育成を目指し、11年から大手広告代理店の電通(東京)に職員を1年間派遣している。加藤さんはその第1号職員でもある。新庄特有の地域資源や、交流人口を増やす方策をじっくり考えるいい機会になったとし、「マルシェ運営は市民や高校生がボランティアで手伝ってくれるまでになった。一つのコミュニティーができており、地元の良さを見直すことや、若者の地元回帰につながっていけばうれしい」と語った。

 今春異動となり、看護師養成所の設置準備を担っている。「開校によって、まちなかににぎわいが生まれるようにしたい」。任務は変わっても“市民第一主義”をどこまでも貫いていく。
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