第7部・出生率高める 岡山・奈義町の取り組み(2)
2018年07月29日
Tweet
![]()
母親たちが情報交換したり、悩みを相談したりする場として親しまれる「なぎチャイルドホーム」。子育ての安心感をもたらしている=岡山県奈義町
奈義町中心部には役場、福祉や観光施設が集中しており、旧保育園を活用し、2007年にオープンしたチャイルドホームもその一角に位置する。一時的な預かり保育を実施するなど保護者の多様なニーズに応え、地域住民との交流活動も行われる。14年に合計特殊出生率2.81を記録した同町。さまざまな子育て支援策の中でも、チャイルドホームの存在は大きく、町全体に育児の「安心感」を広げている。 同施設には嘱託スタッフが常駐する。子育てアドバイザーとして勤務する貝原博子さんは言う。「いろいろな入り口(利用方法)があるのがチャイルドホーム。アットホームに参画できる場なんです」 ![]()
旧保育園を活用した施設内には遊具も多く、子どもたちが自由な時間を過ごす
「家にずっといるよりも、ここに来ると気が晴れる。特に、初めての育児をしているお母さんは助かると思う。自分もそうだった」とうなずいた。保育士の資格を持つ常駐スタッフをはじめ、多くの人と子育ての話をできる。「離乳食、今は何を食べている?」「どれくらい体を動かせるようになった?」―。何げない言葉のやり取りの場が心のよりどころになる。 利用者の中には県外から奈義町に移り住んだ人たちもいる。兵庫県出身の田村貴恵さん(33)は夫が同町出身で、結婚を機に町で暮らし始めた。5歳、3歳の2児の母。既に利用開始から5年が経過し、「いろいろな交流イベントも企画され、ママ友さんとの出会いが広がった」と振り返る。「ふと足を運んでも誰か必ず知り合いがいる。退屈しないんです」 今月、西日本豪雨で甚大な被害が生じた岡山県。奈義町は比較的被害が少なかった。広範囲で浸水した倉敷市真備町から、実家の奈義町に避難している女性(29)も、チャイルドホームを利用していた。3歳の子どもは、突然生活環境が変わり戸惑っている様子だったという。だが施設で元気に体を動かし「ストレスから開放されたよう」と目を細めた。 自由な交流スペースとしての機能にとどまらず、行事や私用で家庭保育ができない場合、生後6カ月から小学校低学年までを一時的に預かるサービスも実施。面倒を見るスタッフの中には、町内在住の18歳以上を対象に募集された「子育て援助提供者」もいる。保護者同士が協力してイベントを企画する「自主保育」があるのも大きな特徴。地域の高齢者と子どもたち、保護者が触れ合う機会も設けられ、町民が一体となった子育て支援の輪が広がっている。 施設の1カ月の利用者数は、延べ800~900人で推移する。子育てアドバイザーの貝原博子さんは、多くの世代が集まり、子育てに関わる重要性を強調する。「昔は身近だった隣近所の人が今は分からない時代。それが“見える”ことで子育ての安心感が得られる」 2015年の住民基本台帳を基にしたまとめでは、奈義町の1世帯当たりの子どもの数は「3人」が最も多く、全体の約4割を占めた。「子どもが3人いてもいいかなと思えるようになってくる」「3人は当たり前の雰囲気がある」―。チャイルドホームの利用者からはそんな声も聞かれた。地域のつながりが少子化対策の好循環をつくり出している。
山形再興-真の地方創生を目指して 記事一覧
|
文字サイズ変更
山形新聞からお知らせ
|