山形再興

第7部・出生率高める 岡山・奈義町の取り組み(5)

2018年08月01日
少子化対策に求められる視点に「意識改革」を挙げる高木直山形大名誉教授=山形市
少子化対策に求められる視点に「意識改革」を挙げる高木直山形大名誉教授=山形市
 合計特殊出生率を10年ほどで約2倍に引き上げ、2.81を達成した岡山県奈義町は、人口6千人ほどの小さな町ならではのきめ細かな支援が特徴だ。子育てに関する行政による経済的支援に加え、地域の支えが産み育てやすい環境をつくり出していた。

 日本全体の状況に目を移すと、厚生労働省による人口動態統計で出生数は2年連続100万人を割り込み、人口減が加速している。本県についても現状は厳しく、2017年の合計特殊出生率1.45で全国平均(1.43)を上回ってはいるが、人口維持に必要とされる2.07に遠く及ばない。16年の市町村別データで2倍を超えたのは三川町(2.11)のみだった。

 豊かな自然に囲まれ、本県と似たような環境にある奈義町の実践は、県内市町村でも決して不可能ではないように映る。本県が進むべき道は。家庭科教育学が専門の高木直山形大名誉教授は、奈義町のように積極的に子育て支援施策を外部に発信する重要性を指摘し、「子育てに対する意識改革」を成否の鍵に挙げた。

 ―人口減が進む中、岡山県奈義町の“成功例”をどのように受け止めるべきか。

 「全国的には特殊なケースかもしれないが、そう言ってしまうと何のために子育て支援策があるのかとなる。奈義町の場合、ここ何年かは高い数値を記録している。子育て支援が功を奏している証拠だろう」

 ―岡山県の北東部に位置し、山合いにある町は本県と似た環境だ。

 「人口6千人ほどの町なので、山形県なら西川町、金山町、舟形町のような規模。これら県内の各自治体も、奈義町と同じような子育て支援策を打ち出していると思う。全然ダメなのではなく、もっとそれぞれの施策を宣伝することが必要だろう。山形県だって自然が豊かで食べ物がおいしい。奈義町のような小さい町でできるのだから、山形県でも合計特殊出生率を引き上げることは可能なはずだ」

 ―奈義町の取り組みからは、子どもを産み育てることに対する心理的不安を払しょくする必要性が伝わる。

 「少子化対策には三つのポイントがあると思っている。一つは出産・子育て支援。例えば育休制度を取り上げると、先進的な北欧に対し、日本の場合は『制度をつくりました』で終わっている感がある。日本は男性と女性で給料に差があるケースがみられ、育休中の給料保障を考えたとき、収入の多い男性の方が休みにくい。企業は育休の取得率向上に頑張っているが、男性が果たして本気で育休を取れるかは疑問が残る」

 ―二つめのポイントは。

 「職場の理解を挙げたい。高度経済成長期以降、日本の職場は男性が動かしてきた。その流れをずっと受け継いでいて、長時間労働は当たり前だし、男性が育休を取りたいと言っても『奥さんはどうしているのか』と聞かれるなど取得しにくい職場環境になっている。そういった考えを変えて、若い人たちが働きやすい職場にしなければならない」

 ―最後のポイントは。

 「性別による役割分業意識の改善だ。男性は仕事、女性は家事・育児のような意識によって、するべきことを固定化する傾向がいまだに根強い。特に三世代同居が多い地方は、両親の考え方がそのまま息子に伝わっていく。私のかつての調査では、三世代同居の世帯と核家族世帯を比べたとき、性別による役割分業感が強いのは三世代の方だということが明らかになっている。もちろん三世代には家族全員で子育てをする良い面はあるが、若い夫婦の考えで家庭が動いていかない難しさがある」

 ―それは地方にも中央にも共通する課題か。

 「同じだ。国や自治体はやらなければいけないことを整理し、個人、そして家庭や地域を構成する人たちは意識を改めることが重要だ」
(「山形再興」取材班)=第7部おわり
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