山形再興

第10部・大学の力 トップに聞く(1) 山形大・小山清人学長

2018年10月29日
県内出身者の入学割合を高める必要性を語る山形大の小山清人学長(中央)
県内出身者の入学割合を高める必要性を語る山形大の小山清人学長(中央)
 若者の県内定着を図る上で、学生が社会に出る前に身を置く大学など高等教育機関が担う役割、寄せられる期待は大きい。年間企画「山形再興」の最終第10部は、県内の大学や研究機関のトップが描く戦略、それぞれの思いをインタビュー形式で紹介する。

 山形大は計約9千人の学生・大学院生を抱える県内最大の高等教育機関だ。県内産業界に人材を輩出する大きな役割を担う一方で、入学者のうち本県出身者が占める割合は25%程度にとどまる。若者の県内定着を促進するには、この数値を押し上げることが肝要だと小山清人学長(69)は言う。地域と共に歩んできた大学の歴史を踏まえ、「県民の期待に見合う成果を出さなければならない」とも強調する。

 ―山形大は県内各地にキャンパスを構え、地域に密着した大学運営を展開している。その中で学生の県内定着に対する考えは。

山形新聞を教材に本県への理解を深める学生。山形大は地元志向を高めるための講義を数多く設け、学生の県内定着に力を注ぐ=山形市・同大小白川キャンパス
山形新聞を教材に本県への理解を深める学生。山形大は地元志向を高めるための講義を数多く設け、学生の県内定着に力を注ぐ=山形市・同大小白川キャンパス
 「県内の高校から山形大に入学した学生は、おおむね県内企業に就職する。県内出身の入学者を30~50%までに増やさなければいけない。そもそも、各キャンパスは県民が絡んでつくられた経緯がある。例えば小白川(前身の旧制山形高校)は、県と市の予算でも足りず、寄付金や特別税によって設置された。県民の期待が山形大そのもの。それに見合うだけの成果を出す必要がある」

 ―本県出身者を増やすために重視していることは。

 「子どもたちが県内の大学に進学するように、私自身、講演では親や祖父母に協力を呼び掛けるようにしている。高度経済成長期に育った大人は、『若者は一度は東京に行くものだ』と考えているように感じる。現在、本県から首都圏に進学した若者の約7割が戻ってこないという統計もある。だから念仏を唱えるように『山形はいいところなんだ』と子どもに言い続けてほしい。地元愛を醸成することが大事だ」

 ―そのための具体的な取り組みは。

 「大学入学後、地元志向を誘導するような講義を全学で計244科目設けている。他県出身の学生に山形を理解してもらう狙いもある。さらに1年生の早い時期でのインターンシップ、バスツアーによる会社訪問も実施している。それにより、人文社会科学部の学生がものづくり企業に就職するなど、これまでにはないケースも生まれている」

 ―これからは18歳人口が減り、受験生の確保を巡る大学間競争は一層厳しくなる。

 「山形大の入学定員は約1700人。山形県の高卒者で国立大に進学するのは千人強というデータがあるので、仮に全員が受験してもまだ定員に余裕があることになる。他県からの入学者がいないと山形大の運営は成り立たず、宮城、新潟、福島の各県をはじめ、最近では栃木県や茨城県もターゲットに小まめな高校訪問を実施している」

 ―山形大はベンチャー企業の設立にも力を入れている。

 「ベンチャーで就職人口を一気に増やすというより、ベンチャーを生み出す“環境づくり”が今は大事だと思っている。10年後、20年後の長い目でみると、IoT(モノのインターネット)などの発達で社会が変わり、会社に属しない人が多くなるかもしれない。1人や数人で新しいことをするスタイルが浸透する気がするので、将来への“橋渡し”ができればいいと考えている」

 ―小山学長は和歌山県の出身で、山形大工学部に入学した。本県で生活する魅力をどう考えるか。

 「山形県で暮らし、“山形年齢”は50歳になった。他の地域とは違い四季がはっきりしていて、景色が変わる。冬の寒さは厳しいが、春はわくわく感がある。子どもを育て、勉強するのに良い環境だ。付属小の卒業式では告辞で『山形県に誇りをもってほしい』と伝えた。精神的に、生きていると実感できるのが山形の魅力だ」
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