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第10部・大学の力 トップに聞く(2) 東北芸術工科大・中山ダイスケ学長

2018/10/30 14:30
日常生活にデザインや芸術の力を生かす重要性を語る中山ダイスケ学長

 東北芸術工科大は、県と山形市が開設し、学校法人が運営する公設民営の大学として1992年度に開学した。一般的な美術大とは一線を画し、デザインとアイデアによって地域に活力をもたらそうと教育・研究活動を展開し、人材育成に努める。ただ、一つの大学にできる地域活性化は限られている。4月に就任した中山ダイスケ学長(50)は、県内の他大学との連携による事業展開が、これからの時代に求められると強調する。

 ―東北芸術工科大は毎年600人前後が入学し、このうち県内出身者の割合は25%ほどとなっている。現状をどう捉えているか。

 「少ない割合だと思っている。もっと山形出身者に芸工大で学んでもらいたい。たぶん山形の人たちにとって、デザインや芸術が遠い存在なのだろう。でも、どんな分野にもデザインやアイデア、芸術的思考は必要だ。例えば新たなアプリを使った暮らし方、雪対策をどうするかなど、日常の中にいろいろなアイデアが求められていく」

 ―志願者確保に対する考え方は。

今年2月の公開プレゼンテーションで卒業研究の成果を発表するコミュニティデザイン学科の学生。地域活性化に向けた方策を提案した=山形市・同大

 「どこにいてもデザインや芸術を学べる時代だが、芸工大は地域に主題を置いている。山形県は少子高齢化などの課題が多い“課題先進県”だからだ。悪い意味ではなく、全国どこの地域もが解決したいと思っている課題が身近にある。関東、関西、九州からも学生が入学してくるが、みんな自分の地元になぞらえ、山形を題材に学ぼうと来てくれる。学生の割合は半分が山形県出身者で、もう半分が全国各地から来た人で交ざってくれるのが理想と思っている」

 ―卒業生の近年の就職先は、これまでのクリエーティブ産業中心から、一般職や福祉分野などに領域を広げている。

 「多くの学生が地元で働きたいと思っているが、出合いがなく、渋々、都市部に出るケースが多い気がしている。私たちの地元産業界へのアピールが足りず、美大生を採用しても社風になじまないと考える経営者が多いのかもしれない。だが他社と差を付ける、新しいサービスを生もうとするとき、少し角度の違った見方ができる若い人が必要なはずだ。実際、自動車販売店に入った卒業生のアイデアで、土日の集客が伸びたという事例がある」

 ―2014年に設置されたコミュニティデザイン学科では、地域づくりのけん引役となる人材を育てている。このほど日本デザイン振興会(東京)によるグッドデザイン賞を受けた。

 「非常にうれしい。コミュニティーデザインを勉強した人が、市町村や県の職員になることも夢ではない。デザイン思考、芸術的思考を持ったクリエーティブな学生が『アイデアのある公務員』になる。そういう人がまちづくりに関わり、他の分野で学んだ公務員と融合すると面白い行政ができると思う」

 ―今後の戦略は。

 「県内の各大学の持ち味を生かし、『山形県で勉強すると面白い』という環境にしたい。県内には数多くの学生がいる。例えば学生街をつくってはどうだろう。各大学で専門的に学ぶ人たちが一緒に住むと、山形ならではの面白い学生街ができるはずだ。山形市内であれば山形大、東北文教大と芸工大が連携し、JR山形駅の近くにつくってにぎわいを生み出す。これからは18歳人口が減り、以前と比べれば、どこの大学にも入りやすくなる。そうすると学生は大学の名前でなく、まちの環境で進学先を選択するだろう。県内全ての学部・学科が山形を題材に手を取り合えば、すごく面白い『学都・山形』ができるはずだ」

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