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挑む、山形創生

第2部「雪」 (5) 共助の除雪(下)

2016/2/21 15:34
高齢者宅などの雪かきに精を出す山形南高の生徒たち=先月18日、山形市東原町4丁目

 多くの県民にとって雪は「邪魔者」だろう。雪国に住むわれわれにとって除雪は重労働で、冬場の生活について回る問題だ。だが、雪が世代をつないでいる事例もある。

■高校生が一役

 今冬、山形市が最も激しい降雪に見舞われた先月18日。山形南高の生徒たちがスノーダンプやスコップを手に、同校周辺の住宅街に繰り出した。自治会の役員たちの指示を受けて、黙々と作業に精を出した。見守っていた住民からは自然と感謝の言葉が発せられた。「ありがとう」

 山形市では高齢者世帯などの除雪に高校生が一役買っている。市社会福祉協議会が除雪用具の寄付を各校に行ったことや、地域との間を取り持ったことなどを契機に市内の13校が協力を買って出た。

 山形南高へボランティアを依頼した東原町第四区自治会長の長瀬裕さん(75)は「高校生は一生懸命。積極的に動いてくれるし、頼りになる」と目を細めた。周辺は路地の細い住宅街で雪捨て場が少ない上、自力での除雪が困難な高齢者世帯が徐々に増えている。同校の卒業生という長瀬会長は「普段はなかなか接する機会が少ないが、活動を通して今の子どもたちの真面目さがよく分かる」と後輩たちに感謝した。

 生徒たちも感じるところが多いようだ。「自分たちの活動で地域の人たちが喜んでくれる。いい関係が築けていると思う」と同校2年岩田俊太朗さん(17)。2年木村拓さん(17)は「雪は重いし、お年寄りにとっては動かすだけでも大変。力のある自分たちが住みやすい環境づくりの役に立ちたい」と話した。

 雪国育ちとはいえ、最近は自宅での雪かきの経験が少ない生徒も多い。家族や地域への感謝の気持ちを持てるようになった。2年高橋勇太さん(17)は「学校の中など、どうしても限られた空間で日々を過ごしている。地域を考えるきっかけになった」と語った。

■県外の学生も

 こんもりと雪の積もった民家が並ぶ静かな集落。晴れ時々吹雪の不安定な冬空の下、東北学院大(仙台市)の学生を中心としたボランティアが除雪に励んでいた。作業は2日目。初日に比べ、手際良くサクサクと排雪が進む。空気は冷たいのに、雪片付けをすると汗が噴き出す。学生たちは時折「あっちー」と声を上げ汗を拭った。

 大石田町北部、最上川左岸の白鷺地区で今月10日に行われた除雪作業。1人暮らしの森谷ハタエさん(85)は「きれいにしてもらって本当にうれしい」と、深々とお辞儀した。

 尾花沢市や大石田町では毎年、各地から大学生などのボランティアを受け入れている。

 先月31日、県内各大学の学生が参加する講座の一環で、尾花沢市市野々地区は学生7人を受け入れた。参加した長崎茜さん(19)=山形大工学部1年=は「助け合いながら除雪する地域の暮らしは、住んでいる人しか分からないと思った」と、しみじみと語った。

 地域コミュニティーの関係の希薄化が指摘されて久しい。隣近所の家族構成を知らなかったり、隣の子と顔を合わせてもあいさつを交わさなかったり。昭和の時代には“都会のこと”だったような実態が、今では県内でも増えてきているのではないだろうか。

 高校生や大学生の除雪ボランティアから見えてくるのは「雪」という厄介者を介し、世代がつながり、若い世代が地方や自らの地域を見つめ直す姿だ。地方創生のためのヒントが少なからず隠れている気がする。

(「挑む 山形創生」取材班)

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