社説

サマータイム導入 悪影響があまりに多い

 夏場だけ時計の針を1~2時間進めるサマータイム制度導入について安倍晋三首相の指示を受けて自民党が検討に入った。2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策が狙いで、省エネルギーや消費拡大の効果も期待されている。しかし、システム変更のコストなど悪影響が大きすぎる。別の方策を考えるべきだ。

 大会組織委員会の森喜朗会長が導入のための法整備を首相に要望した。組織委員会は、暑さを避けるために路上競技の時間を早朝に設定しており、さらに前倒しするのは難しいためと説明している。しかし、日程上、秋の臨時国会に関連法案を提出する必要があるとみられ、検討の時間は限られている。あまりに唐突な提案である。

 サマータイムは戦後の1948年から51年まで4シーズン実施されたが、寝不足になるなどとして評判が悪く、廃止された。近年は何度か導入しようとする動きがあったものの、実現していない。やはり多くの難点が指摘されたからだ。

 勘違いされがちだが、時間がサマータイムに切り替わって時計を2時間早めても、一日の生活パターンが変わるわけではない。起床、出勤、退社、就寝などの時間割はこれまで通りである。

 変わるのは日照時間が後ろにずれることだ。例えば日の出が午前5時、日の入りが午後6時半だとすると、2時間のサマータイムの場合、時計では日の出が午前7時、日の入りが午後8時半となる。

 早朝の涼しい時間帯に社会活動が始まり就寝時間も早まることで空調や照明で省エネ効果が見込まれ、余暇活動が活発化してお金を使うようになるというのだが、極めて疑わしい。サマータイムで明確な省エネ効果が表れたという調査結果は見当たらない。終業後にスポーツなどをする人が大幅に増えるとは思えない。

 最大の問題は、コンピューターなどのシステム変更に多大の労力と費用を要することだ。五輪までの準備期間が2年しかないことを考えると、万全の対応ができず、切り替え時にトラブルが続発する恐れがある。来年は新元号への対応や消費税率改定も控えている。

 健康への影響も心配だ。日本睡眠学会は、慣れるまでに時間がかかり睡眠時間が減るという弊害を指摘している。サマータイムを長年続けている欧州連合(EU)は、健康への悪影響などを理由に廃止を検討している。

 大会組織委員会が掲げている五輪の暑さ対策なら、競技の開始時間を2時間早めてはどうか。マラソンはスタートを午前7時から5時に繰り上げる。競技の準備は大変になるが、一定の期間に限られる。そうした対策を退け、地方を含む全国民に負担を強いる制度を導入しようとするのは理解できない。

 64年の東京五輪は涼しい10月10日の開会だった。そもそも五輪を猛暑の7月下旬から8月上旬に開催することに無理がある。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)が好ましい開催期間として「7月15日~8月末」を設定した経緯があり、いまさら日程変更はできまい。暑さ対策に知恵を絞るしかないが、国民生活に混乱をもたらす対策は本末転倒である。自民党には慎重な検討を求めたい。

(2018/08/18付)
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