社説

稲田防衛相、自衛隊発言 政治利用は許されない

 稲田朋美防衛相が、東京都議選の自民党候補の応援で「防衛省・自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と発言し、批判を浴びて撤回した。

 防衛省と自衛隊が組織を挙げて、特定の候補者を支援しているとの印象を与えかねない発言だ。自衛隊を政治利用しているとの批判は免れないだろう。自衛隊法は防衛省職員を含む自衛隊員の政治的行為を制限しており、発言は法に抵触する恐れがある。野党4党は「撤回して済む話ではない」とし、安倍晋三首相に稲田氏の罷免を求める声明を出した。

 稲田氏は、発言を撤回した際の会見で「自衛隊の活動自体が地域の皆さま方の理解なくして成り立たないということについて、感謝していると申し上げたかった」と説明。さらに「誤解を受けかねない」とも釈明したが、問題の発言は簡潔かつ明快で誤解の余地はない。仮に自衛隊の政治利用が真意でないならば撤回の必要はなく、都議選を控え世論の批判をかわそうとの狙いが透けて見える。

 これまでにも稲田氏は物議を醸す発言を繰り返してきたが、そのたびに安倍政権がかばい、続投させてきた。3月に学校法人「森友学園」との関係を問われた際は「顧問弁護士だったこともないし、法律的な相談を受けたこともない」と否定した後、裁判所の記録が明らかになり一転、撤回と謝罪に追い込まれた。

 2月にも、南スーダンに派遣されていた自衛隊部隊が日報に「戦闘」と記した大規模衝突について、「事実としての殺傷行為はあったが、憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではないことから、武力衝突という言葉を使っている」などと答弁した。自衛隊の安全よりも法的な整合性を優先するような発言は、閣僚としての資質にも疑問符が付く。

 安倍首相は稲田氏に職務継続を命じたが、自衛隊の士気を維持する上で、稲田氏が防衛省トップを務め続けることに国民の理解が得られるだろうか。野党4党は、首相の任命責任を追及していく構えを見せている。

 自衛隊を巡っては先月、憲法9条に自衛隊を明記するとの安倍首相の提起に対し、防衛省の河野克俊統合幕僚長が「自衛隊の根拠規定が憲法に明記されることになれば非常にありがたい」と述べている。憲法を尊重し擁護する義務のある制服組トップの政治的発言として、波紋が広がったばかりだ。防衛省・自衛隊と政治・選挙との関係はデリケートな問題を含む。改憲への強い意欲を示す安倍首相にとっては、さらに慎重な政権運営が求められる中、稲田氏の擁護がマイナスに働く可能性もあろう。

 7月2日投開票の都議選で、自民党は苦しい選挙戦を強いられている。豊田真由子衆院議員が秘書への暴力行為で離党届を出す不祥事があったほか、学校法人「加計学園」を巡る問題もくすぶり続けており、国政での失点が逆風となって自民党候補を直撃している。

 加計学園問題などを契機として内閣支持率が急落する中、稲田氏の発言を「なかったこと」にするような姿勢は許されない。今回の件が都議選への悪影響にとどまらず、政権の浮沈に関わることを安倍首相は肝に銘ずるべきである。

(2017/06/29付)
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