社説

古典と現代アート 多様性が文化を豊かに

 「山形で『日本の現代美術は相当いいところまでいっているぞ』とお示しできればと勇んで来て、山形美術館(山形市)の吉野石膏、長谷川両コレクションを見たら、そちらが圧倒的にすごかった。これだけ和(長谷川コレクション)と洋(吉野石膏コレクション)と現代アートを同時に見ることができるのは、日本の美術館史上でも奇跡的な出来事だと思う」

 27日まで山形美術館で開催中の「日本の現代アートがここにある! 高橋コレクション・マインドフルネス2017」開展式(7月22日)で、鶴岡市生まれの医師でコレクター高橋龍太郎さんはこうあいさつした。日本を代表する草間弥生さんや奈良美智(よしとも)さん、村上隆さんらによる絵画、写真、立体作品を紹介する展示会は連日愛好者でにぎわう。

 訪れる方々には、ぜひ山形美術館の収蔵品も併せて鑑賞してほしい。高橋さんが驚いたような名品がそろっているからだ。南陽市で創業した吉野石膏によるコレクションは印象派をはじめとするフランス近代絵画が充実している。モネ「テムズ川のチャリング・クロス橋」「睡蓮」、セザンヌ「サンタンリ村から見たマルセイユ湾」、ルオー「占い師」、ピカソ「マリ=テレーズの肖像」、シャガール「恋人たちと花束」と列挙しただけでもその水準が分かるだろう。長谷川コレクションは、山形銀行ときらやか銀行の頭取を輩出してきた二つの長谷川家が収集した日本美術の数々。白眉は与謝蕪村「奥の細道図屏風(びょうぶ)」(国重要文化財)だろう。「月日は百代(はくたい)の過客にして」で始まる松尾芭蕉の紀行「おくのほそ道」全文を画家・俳人の蕪村が墨書し、「千住の旅立ち」「山刀伐(なたぎり)峠越え」など九つの場面を俳画にした。その芭蕉がしたためた「出羽三山短冊」、横山華山「紅花屏風」など県の有形文化財も数多い。

 芸術家は先人が営々と積み上げてきたものから養分を受け継ぎ、その上で想像力を羽ばたかせる。高橋コレクション展の現代アートを長谷川、吉野石膏両コレクションと見比べると、伝統的な美術や古典的作品が現代の感性にどのような刺激を与えているのかといった創造の秘密も感じ取ることができるだろう。

 同じことは音楽についてもいえる。モーツァルト、ベートーベンといった人気のクラシック作曲家だけでなく、今はあまり顧みられない作曲家にも目配りし、積極的に聴衆に紹介する姿勢が、音楽文化をさらに豊かにしていく。

 そのような取り組みを続ける指揮者にまだ38歳の山田和樹氏がいる。昨年、日本の伝統と西洋音楽を融合させた意欲作ながら近年実演の機会に恵まれなかった柴田南雄の交響曲「ゆく河の流れは絶えずして」を取り上げ、文化庁芸術祭賞大賞を受賞した。来月3日には、戦前に書かれ80年間埋もれたままになっていた大沢寿人の交響曲第1番などを世界初演する。その後の10日、山田氏は山形テルサ(山形市)でトーク&コンサート「ヤマカズフレンズ」を開く。山形で昨年始まった企画。山田氏が指揮ではなく音楽仲間とピアノ演奏を披露するのが聞きものだが、音楽や芸術に対する姿勢も語ってくれるだろう。いい刺激になるはずだ。

(2017/08/23付)
最新7日分を掲載します。
  • 8月23日
  • 古典と現代アート 多様性が文化を豊かに

     「山形で『日本の現代美術は相当いいところまでいっているぞ』とお示しできればと勇んで来て、山形美術館(山形市)の吉野石膏、長谷川両コレクションを見たら、そちらが圧倒的にすごかった。これだけ和(長谷川コレクション)と洋(吉野石膏コレクション)と現代アートを同時に見ることができるのは、日本の美術館史上でも奇跡的な出来事だと思う」[全文を読む]

  • 8月22日
  • 民進党代表選告示 原点に戻り徹底議論を

     蓮舫代表の後継を決める民進党の代表選が告示された。前原誠司元外相(55)と枝野幸男元官房長官(53)が立候補、9月1日の臨時党大会での投開票に向けて選挙戦に入った。[全文を読む]

  • 8月21日
  • 酒田港に外国クルーズ船 寄港地の魅力磨きたい

     酒田港に今月2日、イタリア船籍のクルーズ船「コスタ・ネオロマンチカ」が寄港した。外国船籍のクルーズ船が同港に立ち寄ったのは初めて。来年以降は寄港回数の増加が期待され、経済波及効果を引き出す戦略が求められている。[全文を読む]

  • 8月19日
  • 日米2プラス2 連携強化慎重に進めよ

     北朝鮮が米領グアム周辺への弾道ミサイル発射という具体的な計画を公表し、挑発を強めている。新たな段階に入ったその脅威への危機感を背景に、トランプ米政権の発足後初めて開かれた日米両政府の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、北朝鮮の核・ミサイル開発計画の放棄に向けて日米同盟を強化し、圧力をさらに強める方針で一致した。[全文を読む]

  • 8月18日
  • 加計学園で大学設置審 審議の透明性を高めよ

     学校法人「加計学園」が国家戦略特区制度を活用して愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画を巡り、認可の可否を審査する文部科学省の大学設置・学校法人審議会は判断を保留することを決めた。月内に予定されていた林芳正文科相への答申は延期される見通しになった。教育内容が不十分と判断したとみられる。[全文を読む]

  • 8月17日
  • 高齢者「限定免許」導入検討 事故防止へ知恵絞ろう

     高齢ドライバーの事故を防ぐため、警察庁は運転免許制度の見直しに取り組む。自動ブレーキや、ペダル踏み間違い時の加速抑制装置などを搭載した「安全運転サポート車」に限って運転できる「限定条件付き免許」を導入したり、80歳以上で違反や事故を繰り返す人に運転免許試験場で実車試験を実施したりすることを検討する。[全文を読む]

  • 8月16日
  • GDP年率4%増 本格回復へ手緩めるな

     内閣府は2017年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値を発表した。物価変動を除く実質で前期比1.0%増、年率換算4.0%増だった。プラス成長は6四半期連続。近年で最長の05年1~3月期から06年4~6月期までと並んだ。輸出は減少に転じたものの、個人消費や設備投資など内需が補い、成長率は前期(年率1.5%増)から大きく改善し、15年1~3月期(同4.8%)以来の高水準となった。[全文を読む]

文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内7市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

週1回配信中!

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2017年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2017年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報、おくやみ… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から