社説

国史跡めざす山居倉庫 街の魅力高める弾みに

 酒田市の山居倉庫を国の史跡に指定してもらおうという動きが本格化した。庄内米の全国的な評価を高めた米どころのシンボル。同市を代表する観光スポットであり、まちづくりの観点からも史跡指定が実現すれば大きな前進となる。

 山居倉庫は1893(明治26)年に7棟が建設され、順次増築された。現在残っている12棟は米倉庫のほか庄内米歴史資料館、市観光物産館「酒田夢の倶楽(くら)」となり、年間60万人以上が訪れる。

 高橋義順著「山居倉庫と庄内米」によると、豪商本間家の6代当主で隠居後も活躍した本間光美(こうび)が旧庄内藩の重臣菅実秀(すげさねひで)に進言し、菅が旧藩主酒井家に働き掛けて84年に酒田米穀取引所が設立された。山居倉庫はその付属倉庫として建てられ、厳正な検査や適切な保管方法により「黒縄の山居米」のブランドを築いた。

 土蔵造りの建物は屋根を二重にして空気を通りやすくし、換気窓も綿密な計算に基づき配置した。西日を防ぐために植えたケヤキ並木は今や巨木に育ち、観光客を楽しませている。ほかにも独創的な設備が見られ、米の品質保持に注いだ先人の知恵や努力が伝わってくる。旧庄内藩校致道館の気風は山居倉庫にも受け継がれ、倉庫員の学問の場になった。

 流通制度の変遷や農業団体の発展など米を巡る情勢が時代とともに変わる中、庄内地方の米づくりに貴重な足跡を残してきた。現在は12棟のうち10棟をJA全農山形と庄内倉庫、2棟を市が所有している。数年後には倉庫の役割を終える見通しとなり、市は国の史跡指定を受け、残る10棟を買い取る方針を固めた。

 市は昨年11月、史跡指定に向けた調査委員会の初会合を開いた。2020年6月ごろまでに文化庁に意見書を提出し、20年度内の指定を目指す。指定されれば取得費の8割を国が補助し、改修にも国、県の助成を受けられるという。指定後は保存活用計画を策定し、改修する際には現状変更の手続きが必要になる。

 市は今後、山居倉庫の史跡としての価値を裏付けるため、昔の検査結果や取引された米の値段を示す文書、幹部などの名簿といった経営に関する資料を掘り起こす。産地としての庄内の評価を高めた史実とともに、全国の米の流通に与えた影響を明らかにしてもらいたい。

 ハード面でも今ある断面図の元になっている資料や、各棟が建設された順番などを探り、不明な点を解明していく。丈夫さなど建物の状況を確認するため場合によって掘削も行う。

 山居倉庫は酒田市内で最も集客力のある観光施設としても重要だ。取得後の活用策など課題は多いが、史跡指定でPR効果を高め、改めて歴史的な価値に目を向けてもらう契機にしたい。

 市は山居倉庫と周辺の旧酒田商業高跡地などの一体的な整備を描いている。酒商跡地については新年度、周囲の道路などより低くなっているグラウンド跡をJR酒田駅前周辺の再開発事業で出る土砂で埋め立てる一方、今後の開発の方向性を固めるという。市内では駅前再開発や酒田産業会館の改築計画が動きだし、街の様相は変わりつつある。山居倉庫の史跡指定を実現し、魅力あるまちづくりの弾みにしたい。

(2019/02/18付)
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