社説

景気後退の可能性 細心の政策運営必要だ

 「いざなみ景気」を抜いて、景気拡大期が1月に戦後最長を更新した―とする政府見解に疑問符が付いた形だ。

 1月の景気動向指数が3カ月連続で低下し、内閣府は基調判断を「下方への局面変化」に引き下げた。

 企業業績を下支えしてきた輸出は、米中貿易摩擦などによる世界経済の減速で逆風を受け始めている。他にもさまざまな要因が考えられるものの、大局的には世界1、2位の経済大国の衝突が実体経済に影響を及ぼし始めたと考えるのが妥当だ。政府、日銀には細心の政策運営を求めたい。

 基調判断自体は、指数の動きを一定の基準に当てはめた機械的な判定で、実際に景気が後退したかどうかは、1年以上先に内閣府の有識者研究会が検証する。

 比較的楽観的な捉え方としては、中国の春節(旧正月)休暇が前年より繰り上がって対中輸出を手控える動きが広がったことや、日本の正月休暇が長かったことによる一時的な現象との見方がある。

 しかし、生産が落ち込んだ最大の原因である中国経済の失速は、膨大な債務残高など中国特有の問題に加え、米国との貿易協議の行方がなかなか見通せないことに起因している構造的なものだ。

 日本の1月の対中輸出は、半導体や産業機械を中心に前年から17%も落ち込んだ。中国の工作機械やエアコンメーカーに納入している半導体大手ルネサスエレクトロニクスは、この流れを受けて半導体生産の前工程を手掛ける子会社の那珂工場(茨城県ひたちなか市)など国内6工場の操業を約2カ月間停止することになった。後工程を担う本体の米沢工場(米沢市)など3工場も数週間、操業を停止する。

 日本からの自動車や電気製品などの輸出が従来通りの水準を維持できるという前提に立った企業戦略や経済運営は、楽観的過ぎると考えた方がいいだろう。

 「下方への局面変化」という基調判断は、それ以前の数カ月前に景気がピークの「山」を付けた可能性を示している。市場関係者の間には以前から、景気は2018年の秋に「山」を付けていたとの見方があった。

 同じ基調判断は、消費税率を8%に引き上げた後の14年8~11月にも採用されたことがある。当時は消費税増税の直後で、増税前の駆け込み需要の反動減などから消費が著しく落ち込んだ。しかし内閣府の研究会は、景気回復は続いていたと認定した。

 今回は米中貿易摩擦の影響、中国経済の失速が発端となった。今後はこれに、今年10月の消費税率10%への引き上げというマイナス要因が加わってくる。原材料費や人件費の高騰を理由にした食品の値上げも相次いでおり、可処分所得が増えない中で、消費者心理が冷え込むことも十分予想される。

 一方、19年度予算案は100兆円を超える最大規模となっており、追加的な財政措置は常識的に考えれば困難だ。日銀による追加金融緩和も、既に金融機関の経営圧迫など副作用が目立っており、ハードルが高い。いくら円安でも需要が減退すれば輸出は逆風にさらされる。アベノミクスの弱点が露呈したといえよう。

(2019/03/18付)
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