社説

大谷選手新人王 夢を追う者への称賛だ

 日本の野球ファンにとっては納得の受賞だろう。米大リーグ、ア・リーグの新人王にエンゼルスの大谷翔平選手が選ばれた。全米で計30人の大リーグ担当記者が投票した結果だ。

 レギュラーシーズンで強豪ぶりを発揮し、ア・リーグのプレーオフに進出したヤンキースの新人ミゲル・アンドゥハー内野手は、打率2割9分7厘、27本塁打、92打点と堂々たる成績を残していた。大谷選手は投手では4勝2敗、防御率3・31。打者では打率2割8分5厘、22本塁打、61打点という数字だった。投票は接戦になると予想されていた。

 米国は現実的な選択を好む国だ。大リーグ記者も選手を評価する際には、数字に表れた実績を重要視するのではないか、大谷選手の受賞は難しいのでないかとの見方があった。

 ところが、ふたを開けてみると、30人のうち25人が大谷選手を1位に推し、2選手の獲得ポイントには大差がついた。投票結果の発表後、米メディアがこぞって大谷選手の活躍ぶりをあらためて紹介した。その内容と分析には、大谷選手当選の理由がはっきりと示されていた。

 多くのメディアは伝説の選手、ベーブ・ルースがファンの心をつかみ熱狂させてから約100年、誰も成し遂げなかった二刀流に大谷選手が挑戦したこと、さらに160キロの剛速球を投げ、ポンポンと本塁打を連発したことを高く評価したのだ。才能の豊かさを表彰する意味合いがある新人賞では、必ずしも数字が全てではないのかもしれない。

 米メディアは二刀流の夢を追う者を称賛し、とてつもなく大きなスケールのアスリートが出現したと報道した。壮大な夢を歓迎するメッセージと、スター選手になることへの期待をその投票に込めたとも受け取れる。

 大谷選手は自身の進みたい道を進んでいるから、多少の好不調の波があっても、それを乗り越えているに違いない。二刀流をこなすための準備は繊細で、時間がかかるものだという。その難しい課題を前にしても、難しいからこそ、やりがいがあると信じ、不振に悩む様子は見せない。いつも積極的でチームメートと笑顔で言葉を交わしている。前向きな姿勢も才能の一部と言える。しなやかで大きく、バランスの良い体がダイナミックに、かつ合理的に動く。それは気持ちの余裕から生まれる冷静さと、的確な技術的予測に支えられているからだろう。

 大谷選手がここまで、指導者に恵まれたことも忘れるわけにはいかない。日本ハム時代の栗山英樹監督と、今季終了とともにエンゼルスの監督を退任したマイク・ソーシア氏がともに、二刀流を後押ししたからこそ、投打のスケールはさらに一回り大きくなった。

 スポーツの指導者は時には選手の考えを受け入れ、それを実現させるための支援も求められよう。自身の体験や固定観念にとらわれていたのでは、特別に優れた選手の才能を伸ばすことは難しい。そのスポーツの技術と規則について常に正確な情報を得て、試合に向けて有効な戦略、戦術を授けるだけでは足りない。大谷選手の歩みは指導者側の柔軟性が大切であることも教えてくれる。

(2018/11/17付)
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