社説

日産ゴーン会長逮捕 不正の全容を洗い出せ

 経営危機に陥った日産自動車を立て直した「カリスマ経営者」「日産の救世主」は一夜にして「容疑者」に転落した。

 日産のカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。有価証券報告書に記載が義務付けられている役員報酬を過少申告した疑いが持たれている。

 役員は年間1億円以上の報酬を得た場合、有価証券報告書に総額を記載する必要がある。経営の透明性を確保するためだが、毎年10億円前後を受け取り、たびたび「法外な報酬」を批判されたゴーン会長は2011年から5年間に計約50億円も過少申告していたとされる。虚偽記載により投資家や株主を欺いた形だ。税務申告が適切だったかも焦点となろう。

 有価証券報告書の記載は投資家らの重要な判断材料になり、虚偽記載には10年以下の懲役か1千万円以下の罰金、またはその両方、法人には7億円以下の罰金が科される。日産は内部調査で虚偽記載のほか会社資金の私的流用なども把握し、特捜部に情報提供。双方は捜査に協力する代わりに刑事処分を軽くする司法取引に合意している。

 特捜部は虚偽記載の実行に関わった末端社員などから協力を得るとみられる。トップの不正を徹底的に洗い出してもらいたい。一方、日産は信頼回復に向け捜査に協力することはもちろん、できるだけ早く不正の全容と対策を詳細に自ら公表することが求められよう。

 日産によると、内部通報をきっかけに数カ月間、ゴーン会長ともう一人の役員の不正行為を内部調査。その過程でゴーン会長が長年にわたり有価証券報告書に報酬額を過少に記載していたこと、さらに会社の投資資金や経費を私的な目的で支出するなど「複数の重大な不正行為」があったことが確認されたという。

 ゴーン会長の逮捕容疑は、11年3月期~15年3月期に計約99億9800万円の報酬を受けながら、計約49億8700万円と過少に記載した有価証券報告書を関東財務局に出したというものだ。

 ゴーン会長は深刻な経営危機に陥った日産にルノーから派遣され、最高執行責任者(COO)を経て00年に社長に就任した。日産とルノー間で生産や購買の共有化を進めて効率化を図る一方、生産拠点の閉鎖や人員の大幅な削減など大規模なリストラも強力に推進した。その結果、日産は業績を急速に回復した。さらにルノーのトップを兼任。16年には日産が燃費不正問題で経営が悪化した三菱自動車を傘下に収め、日産・ルノー・三菱の3社連合を率いる立場に。3社合わせた18年上半期の世界販売台数は553万台余りと2年連続で首位になった。

 「コストカッター」の異名を取り、その経営手法は日本の経済界に大きな影響を与えた。しかし最近、日産は燃費測定の不正検査問題を起こすなどガバナンスが乱れ、米市場で苦戦するなど「ゴーン流」の限界を指摘する声も上がっていた。そんなとき、会長逮捕で不正が一気に噴き出した。日産の経営への影響は計り知れない。立て直しは厳しい道のりが予想される。不正の全容と対策についてきちんと説明責任を果たすことがその一歩となろう。

(2018/11/21付)
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