社説

米大統領きょう来日 真価問われる安倍外交

 米国のトランプ大統領が令和初の国賓としてきょう来日する。6月には大阪で20カ国・地域(G20)首脳会合が開かれ、安倍晋三首相は中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領ら各国トップとも会談する見通しで、日本を舞台にした重要な外交日程が続く。

 貿易摩擦を巡る米中両国の制裁・報復合戦は世界経済に深刻な影を落とし、中東情勢も不安定化への懸念が広がり、国際社会は混迷する。そのもとになっているのは、ほかならぬ「自国第一主義」を掲げるトランプ大統領の振る舞いだ。

 安倍首相は大統領の“友人”として、さらにはG20の議長役として、自由貿易の旗の下、各国の連携・協調体制を打ち出すことができるのか。首相が名付ける「地球儀俯瞰(ふかん)外交」は正念場を迎え、安倍外交の真価が問われる。

 安倍首相がトランプ大統領と蜜月時代を築き、日米関係の安定に寄与したのは間違いない。しかし、電話会談も含め約40回にもわたる直接対話は、予測不能な大統領が何を言い出すか、身構える場面が目立った。首相は「同盟の強固な絆」を繰り返すが、北朝鮮対応などでは一致しても、その他の課題では、日本外交の方針と相反するものが少なくない。

 環太平洋連携協定(TPP)や地球温暖化防止のパリ協定、イラン核合意といった国際的な枠組みからの離脱、ロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄…。鉄鋼やアルミニウム、自動車の輸入増を「安全保障上の脅威」と宣言し、制裁を振りかざし通商交渉に臨む姿勢は、協調に背を向け、保護主義に走る指導者そのものだ。

 そんな大統領に対し、首相がなだめ、説得し、翻意を促したとは言い難い。各国は、日米両首脳の親密さを認識しているからこそ、安倍首相にその役割を期待している。真の蜜月関係は、演出ではなく、時には毅然(きぜん)と異論もぶつけ、率直に意見交換する姿を指すのではないか。

 とりわけ深刻なのは米中の対立だ。首相は日米同盟強化の一方で、中国との関係も「完全に正常な軌道へと戻った」と強調しており、米中どちらにも“加担”しにくいだろう。米中のはざまで「橋渡し」役を果たせるか。悪影響が出てきた日本経済の先行きもかかっている。

 ロシアとの北方領土問題は、日ロ外相が会談を重ねているが、溝が埋まらないままだ。昨年来、安倍首相は「わが国固有の領土」など、従来の原則を表す言葉を国民への十分な説明もないまま封印し、対ロ外交に前のめりになってきた。それだけに6月の日ロ首脳会談では、こうした「アナウンスなき政策転換」に一定の方向性を示さなければならない。

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に呼び掛けた無条件の首脳会談も唐突感が否めない。北朝鮮の核問題に関する6カ国協議の構成国のうち、日本だけが対話をできない状況に焦りを募らせたのかもしれない。日朝の首脳が直接話をする意義は小さくないが、大きな戦略を描いた上で、入念な準備が必要だ。

 懸案の日本人拉致問題の進展には、米国はもちろん、中国、ロシア、韓国の協力が欠かせない。安倍外交には、より重層的な展開が求められている。

(2019/05/25付)
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