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クラウドファンディングを検討したい。

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成功者の提言

川西町演劇研究会会長 古川孝

 「それじゃあ何かい、おめえたちは、どうしても江戸の舞台を踏みたいってぇわけかい!」

 「そうなんです!座長、あたしたちは何が何でも座長の生きてるうちに、花のお江戸のひのき舞台をと思ったのよ。それが亡き大師匠への恩返し、大きな供養でもあると思うのよ」

 「だけどな、江戸の舞台となればてぇした路銀と掛かりが要るんだよなぁ…」

 人情話の枕のようになりましたが、いつの世も夢の実現の前に立ちはだかってきますのは、お金の調達問題のようでございます。私たち川西町演劇研究会も、東京公演を何度も企画し、経費の壁にぶち当たっては諦めてまいりました。苦心惨憺(さんたん)の上たどり着いたのが、現代版夢の玉手箱、インターネットのクラウドファンディングによる資金調達でした。

 クラウドファンディングという目新しい造語は、なんとも怪しく、劇団員全員が警戒態勢でした。散々お金を先に頂いてから舞台に穴をあけたらどうしよう、集まらなかったら固定ファンに恥ずかしい、と喧々囂々(けんけんごうごう)の議論となりました。

 しかし「難しいことを易しく、易しいことをより深く」という言葉をみんなが思い出しました。私たちが所属した演劇学校の校長だった川西町出身の劇作家井上ひさしさんの言葉です。そして「人間の悲しかったこと、楽しかったこと、それを伝えるのがお前の仕事じゃろうが」という芝居の名ぜりふがみんなの頭によみがえってきました。

 こうして、すったもんだの揚げ句、山形新聞社の購入型クラウドファンディング「山形サポート」で、井上さん原作の2人芝居「父と暮せば」初の東京公演に関し、資金募集を開始した次第です。

 やってみると、全ての心配は杞憂(きゆう)でした。それどころか思いもよらない感涙と感激する出来事が次々に起こったのでした。

 例えばこんなメッセージが寄せられました。「実は親娘で『父と暮せば』を何度も見るたびに、この劇団のこの芝居を山形だけでなく、全国の人々に見せてほしいとずっと思ってました。家族で精いっぱい応援しますからぜひ東京で頑張ってください」。こんなありがたいご支援を頂いたら泣けます、田舎町の役者冥利(みょうり)に尽きます。

 何が何でも実現しよう、夢のままで終わらせたら一生悔いが残ってしまう。できる限りの表現でこれまで抱いていた思いを全国に発信し、その思いの評価だけでも虚心に承ろうと決めました。

 結果は目標の55万円に対し、130%の達成でした。ついに東京公演が10月に実現可能になりました。要は「夢はあるんだが資金がない」とお嘆きの方に申し上げたいのです。まずは挑戦してみて-と。必ずや得る物がたくさんあります。ただしチーム全体の不安感を飛び越すほどの情熱と意欲と信念が実行者になければお薦めできません。

 夢を持つことは実に素晴らしいこと。なぜならいくらたくさん夢を持っても少しも金がかかることはないからです、タダだからです。しかし実現となると…。この繰り返しで私たちもついに一生を終わるところでした。ご支援ありがとうございました。「情けは人のためならず」と申します。皆さま、クラウドファンデイングをどうかよくご理解ください。(南陽市在住)

[2017年7月12日掲載]