NIBフロントライン

エービーエム会長
吉野徹氏
吉野徹氏
【インタビュー】
 -業界と自社の現状は。

 「ビルメンテナンス業界は人手不足の状況にあっても相変わらず低価格競争に明け暮れ、業界全体でサービスの質の低下が懸念されている。こうした状況だからこそ、当社はサービスの質で同業他社との差別化を図ってきた。具体的には『顧客満足』は当然のこととして、さらに上を目指すため、目標となる意識を『顧客感動』とし、全社員が共通認識を持つように徹底している」

 -求めている人材は。

 「ビルメンテナンス業の特性から、社員はサービスを提供している顧客の建物、敷地に常駐していることが多い。社員には技術、技能はもちろん、高いコミュニケーション力と社会人としてのマナーを求めている。仕事はあいさつで始まり、あいさつで終わるものと考える。明るく元気なあいさつは何事にも代え難い。円滑なコミュニケーションは顧客との信頼関係を築く第一歩だ。定期的に外部講師を招いてマナー講習などを開催し、コミュニケーション能力の向上に努めている」

 -社員の力、会社の力を高める方策は。

 「当社は、ほとんどが中途採用だ。この業界の仕事が未経験の人も多い。そのため社員教育には特に力を入れている。設備保守に関する国家資格は数多くあり、警備や清掃業務でもさまざまな資格検定がある。それらの取得に向けた支援はもちろんだが、会社独自の検定制度も設けている。社内講師がグループを構成して教育メニューの作成から合否の判定会議に至るまで一括して運営させている。任せることで講師陣のスキルが上がり、結果的に社員全体のレベルアップにつながると考える」

 -影響を受けた人物は。

 「普段の付き合いの中でさまざまな方から学ぶ機会が多い。その中でも約10年前に亡くなった米沢興譲館高吹奏楽部の先輩でもある川島印刷(米沢市)の前社長を務めた川島良博さんからは人脈を広げることの大切さを教えてもらったと思う。各種会合で撮影した写真を次の日にはプリントして出席者に配って親睦を深めていた。仕事を円滑にする上で人脈作りは欠かせない。川島さんの細やかな気配りに『会合の席だけで終わりにしない』という、工夫が感じられた」

 ★吉野徹氏(よしの・とおる) 神奈川大学工学部卒。米沢市職員を経て1981年にエービーエム入社し、専務を経て92年に創業者の父から会社を継ぎ社長に就いた。2009年から現職。03~07年まで県ビルメンテナンス協会長を務め、13年には米沢商工会議所会頭に就任した。米沢市出身。69歳。

 ★エービーエム 1968(昭和43)年9月に「オールビルマネジメント」として創業。1991年にアルファベットの頭文字を取って現社名に変更した。業務はビル管理、消防設備設計・施工、清掃、警備、舞台管理、公共施設の指定管理など。置賜全域を営業エリアにし、南陽市宮内に南陽営業所を置く。従業員280人。資本金1千万円。本社は米沢市窪田町窪田584の2。

【私と新聞】幅広い情報、頼りになる
 吉野徹会長は朝、自宅で新聞に一通り目を通す。出勤してからは山形新聞のほか複数の新聞を開いて地元の政治経済に加え、地域のイベント情報などから「現在の動きを知る」という。

 「幅広い情報をバランスよく入手できるため新聞は頼りになる存在」と語る。最近は情報入手の手段にインターネットが台頭しているが、「使い方を注意しないと考えに偏りが生じる恐れがある」と話す。

 その理由として、知りたい情報はとことん検索できるネットの特性を上げ「賛否が分かれる問題があった場合、『賛』の主張だけ、どんどん仕入れる一方、『否』の主張には目をつむることになりやすいから」という。

 米沢商工会議所会頭などの役職も務めることから公の場であいさつする場合も多い。「新聞で得た地域の話題はスピーチの材料にとっても役立っている」と笑った。

【週刊経済ワード】ベンチャー型事業承継
 伝統的な中小の同族企業で世代交代をする際に、新たなビジネスに参入する取り組み。企業がこれまで培った技術やノウハウ、信用を生かせるメリットがあり、事業を一から立ち上げるベンチャー企業に比べて、新規参入後に軌道に乗りやすいとされる。新たな産業創出につながるとして、国も支援を進めている。
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