克服(3)運休・遅延 在来線構造ゆえ多発~山形にフル規格新幹線を|山形新聞

山形にフル規格新幹線を

克服(3)運休・遅延 在来線構造ゆえ多発

2017/1/7 11:25
地震の影響でダイヤが乱れ混雑する赤湯駅構内=昨年11月22日、南陽市

 全国初の「新幹線直行特急」として1992年に開業した山形新幹線は、在来線のレーンを改良する画期的な手法を用いることで本県を高速交通時代へと導いた。しかし、豪雨や大雪、野生動物の衝突といった要因で運休・遅延が相次ぐなど、その構造ゆえの脆弱(ぜいじゃく)性が指摘されている。高架橋上の専用軌道を走行するフル規格新幹線の実現は、鉄道輸送の安定性を飛躍的に高めることに直結する。

 山形新幹線の開業に伴い、奥羽本線山形―福島間の線路幅は従来の1067ミリから新幹線の「標準軌」である1435ミリに改軌された。99年の新庄延伸で山形―新庄間も標準軌化。これによりミニ新幹線の走行が可能になった。しかし、線路幅以外、土台などは基本的に在来線と同じ構造のため、鉄筋コンクリートで固められた高架橋上の線路を走るフル規格新幹線と比べて安定性の面で劣るのが実情だ。

 県がまとめたJR東日本管内の在来線、新幹線の運休・遅延状況によると、2010~14年の年間運休・遅延件数は在来線の1200~1400件台に対し、フル規格新幹線は20~40件台で推移。一方、10~14年度の山形新幹線の年間運休・遅延は260~410本に上り、フル規格新幹線よりも信頼性で見劣りする。

 新幹線の売りはスピードと定刻通りの運行という確実性であるはずだ。この強みが揺らぐことは、利用者にとって大きな不安要素となる。16年10月、吉村美栄子知事らと共に国土交通省を訪ね、県内の商工会を代表し、奥羽・羽越両新幹線のフル規格化を要望した県商工会連合会の小野木覚会長は「大雪で止まる新幹線は特急と変わらない。仙台経由で東京に向かった方が確実な日もあるくらいだ」と運行の不安定さに苦言を呈する。経済活動の活性化という観点からも、気象条件に大きく左右されない基盤整備が必要だ。

 JR東日本は2002年度までに新庄―福島間で大々的な降雨防災強化対策を実施した。約150カ所でのり面の補強や排水設備の強化、土砂崩れ防止などの対策を施した。さらに13~15年度にも赤湯―かみのやま温泉間で対策工事を進めた。それでも運休・遅延が減少傾向に転じる兆しは見えてこない。

 奥羽本線で開業当初から降雨被害が懸念されているのは庭坂―関根、赤湯―かみのやま温泉、芦沢―新庄の3区間。いずれも地盤が弱く、特に最大のウイークポイントとされる山岳部の庭坂―関根間では抜本的な対策が不可欠だ。16年11月、福島県沖を震源とする地震の影響で最大2時間以上の運休が生じ、災害への弱さを露呈したことは記憶に新しい。ミニ新幹線は自然災害の影響を受けやすく、フル規格新幹線以上に慎重な安全点検を行わざるを得ない事情があるためだ。

 県は15年度、JR東日本に対し、フル規格仕様のトンネルの可能性にも踏み込みながら同区間を含む米沢―福島間の安定性確保を要請した。JR東日本は15年度から2年かけて抜本的な防災対策の調査、検討に着手した。特に板谷峠を含む米沢―庭坂間を対象に地質や山の状況を調べ、豪雨や大雪への対策を探っている。

 フル規格新幹線用のトンネル導入を実現することで、将来的な山形新幹線フル規格化への道筋を付ける―というのが県の描く戦略だ。しかし、新たなトンネル掘削も案の一つとなっているものの、あくまで「在来線規格」(JR関係者)という。2年間の調査・検討を経て、どのような対応に至るのか。JR側の結論に注目が集まる。

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