山形にフル規格新幹線を

雪との戦い(下) こまちと比較

2017/3/5 15:23
山形新幹線つばさと同様にミニ新幹線として運行している秋田新幹線こまち=秋田市・JR秋田駅

 山形新幹線つばさと同様に、ミニ新幹線方式で運行されている秋田新幹線こまちに乗ってみた。盛岡駅で東北新幹線から切り離され、秋田県に向かう。県境が近づくにつれ、車窓から見える雪は増えていく。県境付近は雪深いが、こまちは今冬、雪による運休はまだないという。山形新幹線にとって冬場の課題となっている峠越えは、それほど大きな問題としては捉えられていないようだ。

 山形新幹線は先月2日、大雪の影響で16本が運休し、ダイヤが大幅に乱れた。だが、秋田新幹線は運休や遅れが出ず、影響は受けなかったという。

 こまちに乗って取材をしたのは先月末。天候も良く、車窓からは雪に反射した日差しが入る。盛岡を出て20分ほどで山あいを通り始めた。盛岡―田沢湖間は、雪の量や風景が、山形新幹線の福島―米沢間と似ている。携帯電話の電波も入りにくくなり、峠付近は不感地帯となっていた。

 順調に列車は進み、秋田県に。秋田駅まで向かう間、田園地帯を通る様子もつばさと同じ。大曲駅からは奥羽本線に入り、スイッチバックでそれまでとは反対の方向に走り出した。

 こまちは2013年3月に秋田県大仙市の神宮寺―刈和野間で脱線事故を起こしている。先頭車両が雪に乗り上げて線路から外れ、長時間立ち往生した。除雪など雪対策が不十分だったことが原因とされた。

 JR東日本秋田支社によると、12年度の冬は雪が多く、55本の運休が出たという。ただ、その後は除雪を徹底したこともあり、13年度11本、14年度2本と雪による運休は減り、15年度はゼロだった。本年度も先月末現在、雪による運休はないという。

 JR東日本は、いずれの新幹線の通過区間でも同様の除雪体制を敷いており、今季の運休本数の違いは「気象条件や雪の降り方の違いではないか」と説明する。同秋田支社の担当者は「山形の峠越えに比べ、秋田新幹線が通る区間は雪が少ない」と話す。本県では県議会などでもつばさの安定輸送に向けた取り組みなどが度々話題になるが、秋田県議会では特段、取り上げられたことはないという。

 秋田県では、秋田空港から2社が羽田便を運航しており、計9往復が飛んでいる。大館能代空港からも2往復の羽田便がある。秋田市内からは航空便に合わせて空港へのバスが出ており、アクセスも悪くない。

 フル規格の奥羽、羽越両新幹線の整備は、秋田県も本県などと連携して要望している。だが「山形県に比べて熱が高まっていない」と同県の担当者は内情を明かした。本県に比べて充実している空路の存在も、課題意識や不満が大きくなっていない要因ではないかと担当者は指摘する。

 つばさは、同じミニ新幹線のこまちよりも過酷な峠越えを強いられる。山形空港では羽田便が朝夕2往復、庄内空港では4往復が飛んでいるといっても、秋田の充実ぶりとは比べものにならない。地方創生。すなわち都市と地方が役割を分担することで東京一極集中を是正しようと考えるとき、首都圏との安定したアクセスは欠かせない要素だ。峠の雪との戦いに正面から向き合うことが求められている。

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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