やまがた観光復興元年

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やまがた観光復興元年

第4部・変わる情報発信[8] 現地での案内(下)

2014/4/26 11:56
観光客の要望をもとに周遊ルートを設定していく広域観光情報データベース。近く運用を始める=米沢市・置賜広域観光案内センター「アスク」

 観光のトレンドは様変わりした。入念な計画に沿って行動する発地型・団体客ツアーはめっきり減り、日程に自由度を持たせた着地型・個人客ツアーが主流だ。現地で計画を変更したり、行き先の順番を入れ替えたり…。そんな旅行者への対応が欠かせない。

 「日程の隙間を有効に使えた時の充実感こそ旅の醍醐味(だいごみ)。また来てみたいと思い、口コミで広がる」と山形おきたま観光協議会の安孫子義浩事務局長(51)。しかし「観光事業者とはいえ、自分のまち以外のことは意外に知らない」。

 客の細かなニーズに対応しようと、協議会は広域観光情報データベースの制作を進めている。いわば「置賜観光虎の巻」だ。基本情報に加え、観光スポットなら「バリアフリー」「パワースポット」、食なら「B級グルメ」「ランチサービス」、温泉なら「源泉掛け流し」「エステ」など客が現地で求めることを想定した独自の検索機能を備える。

 観光案内所などの端末を使い、客と触れ合い、やりとりを楽しみながらルートを設定、印刷して渡す。山形デスティネーションキャンペーン(6月14日スタート)までに運用を始める予定だ。データベース構築の先には、二次交通や体験企画の手配も行う案内役「観光コンシェルジュ」の育成を見据えている。

 山形おきたま観光協議会が手掛ける広域観光情報データベース、それを使いこなす観光コンシェルジュの育成。このシステム構築と人づくりの両面で推し進める事業は、山形デスティネーションキャンペーン(DC)の展開と密接に絡んでいる。

山形DCの前哨戦となるやまがた花回廊キャンペーンのオープニング。この盛り上がりをDC後に引き継ぎたい=JR米沢駅

 東日本大震災の風評を引きずる置賜地域にとって、DCは現状打開の願ってもない好機。しかし、DC開催で短期的に観光客が増えるものの持続しない「DC燃え尽き症候群」に終わってはいけない。事務員の梶原仁也さん(34)いわく「DC後の10年間を見据えた持続可能な取り組みに」との願いを込めた事業だ。

■操作習熟始まる

 先月、データベースを活用した初のワークショップが米沢市で開かれた。コンシェルジュとして期待される観光案内所や道の駅、旅館などの約20人が参加。▽20~30代の女性グループ▽4人家族▽60代夫婦―の3グループを想定し、好感を与える接客のポイントを学ぶとともに、システム操作の習熟をスタートさせた。

 「半日で花と温泉を楽しみたい」という要望をもとにルートづくりを実践。端末画面には花、昼食、日帰り入浴を楽しめる候補スポットが列記される。高齢者向けには「バリアフリー」、家族には「アレルギー対策」、若い女性には「分煙」などの検索オプションでふるいに掛けていく。それぞれ上杉神社(米沢市)をプラスした米沢、南陽、長井、飯豊の4市町、6カ所を巡る欲張りプランが出来上がった。

■能力向上めざす

 データベース構築事業は2016年度までで、内容の充実は日々進んでいる。本年度からはコンシェルジュ育成事業が本格化。客のニーズを的確にくみ取るコミュニケーション、要望を組み合わせるコーディネート、丁寧に周遊プランを提示するプレゼンテーションという三つの能力を伸ばそうと、年度内3回のセミナー開催が計画されている。現地を訪れた旅行者にとって「案内そのものが最初のおもてなし」と安孫子義浩事務局長。「案内力のアップなくして着地型観光のメッカにはなれない」と言い切った。

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