穀物の自給率を向上させるとともに、食の安全と日本の水田文化の保全に貢献する―。国が主食用米から飼料用米への転作を促す政策にかじを切ったことで、コメを餌に「こめ育ち豚」を育てる食肉生産・販売の平田牧場(酒田市)の先進的な取り組みが、再び注目を集めている。飼料用米を生産する農家の手取り額は次第に上昇、国が手厚い支援策を打ち出したことで、作付け拡大はさらに進みそうだ。
■自給率を向上
「平牧三元豚」のブランドで知られる同社は1996年に飼料用米を導入した。遊佐町が「食料自給率向上特区」の認定を受けた2004年からは、生産者や消費者と連携し「飼料用米プロジェクト」をスタート。06年から2年間にわたり続いた世界的な穀物高騰をきっかけに、各メディアで取り上げられた。
同社が示すモデルでは、日本の穀物自給率の20%アップを目標としている。日本は飼料として年間約1250万トンのトウモロコシを輸入しており、モデルでは代替物として飼料用米を活用。国内の減反田約100万ヘクタールに仮に全て飼料用米を植えれば、約700万トンの収量になる。自給率は27%から48%に増加する計算だ。
■高価格で支援
飼料用米の生産者の手取り額は、販売価格と各種補助金の合計だが、大部分は補助金で成り立っている。JA庄内みどり(酒田市)管内の農家の手取り額は、飼料用米600キロ当たりで、04年は3万1730円だったが、補助金が手厚くなるにつれて上昇。09年には10万円を超えて11万3100円になり、その後も10万円前後で推移している。
国が本年度から、主食用米からの転作を促すために補助制度を変えたことで、600キロ当たりの手取り額は8万5千~13万5千円になる見込み。酒田市の10アール当たりの基準収量618キロでは11万円になり、14年産「はえぬき」の概算金8500円(60キロ)と比較すると、いかに飼料用米が魅力的か分かる。
平田牧場は輸入トウモロコシより高い価格で飼料用米を買い取り、農家を支援している。
■肉質を見極め
同社の豚の出荷量は年間約20万頭で、全ての豚に飼料用米を混ぜた餌を与えている。14年度のJA庄内みどりからの買い取り量は約3600トンの見込みで、来年度はさらに上積みしていく考えだ。餌に配合する飼料用米の割合は三元豚10%、金華豚15%。今後どこまで配合割合を増やすことができるのか、肉質を見極めながら実験していく。
JA庄内みどり管内の飼料用米の作付面積は本年度約600ヘクタールで、来年度は約千ヘクタールへの拡大を想定。営農販売部の佐藤裕部長は「コメ余りの状況の中、主食用米からの転作はまだまだ進むだろう。国の支援策をうまく利用していきたい」と語る。
豊かな土地を次世代に継ぐ「循環型稲作」を描く平田牧場の新田嘉七社長は、「農家がコメを作り続けられることに意味がある。飼料用米生産の意義を消費者に理解してもらいたい」と話した。
(「やまがた農新時代」取材班)
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