「求められれば何でも作る。ものづくりを通じて身近な困り事を解決したい」。工作機械器具などの開発、試作を手掛けるアルファ・テクノツール(河北町)の武田幸一社長(67)は、ものづくりへの姿勢をこう語る。同社が世界で初めて開発した精密塗装用の超高性能静電気除去装置「イオンマックス」は、知り合いの板金塗装店からの相談がきっかけだった。
塗装作業では、塗装面の下地処理や研磨などで発生する静電気が原因となり、塗料を吹き付ける際にごみの付着や練り込み、色むらが課題となっていた。
同社が開発したイオンマックスは、吹き付け塗装時に静電気の帯電を防ぐ装置で、空気を送り出す装置内に電圧をかけ、電気的にプラスでもマイナスでもない無帯電状態の「中和イオンエアー」をつくり出す。これにより塗料が静電気を帯びずに噴射され、ごみ、ちりが付着しにくくなる。
■コスト削減も
使い勝手がよく、コスト削減にもつながるとして、大手自動車メーカーの部分塗装の工程や系列会社の内装品工場でも採用されている。
イオンマックスは、メタリック系やパール系などの特殊塗料が塗装面にきれいに配列されるという特長があり、塗装むらは大幅に改善される。部分塗装時の「ぼかし」もきれいに仕上がる。さらに、薄くて均一な塗装が可能になることで、使用する塗料はこれまでより14.3%削減できるという。
武田社長は大手の日用品・素材メーカーで半導体運用技術や道路標識関連の開発などに携わり、1989年に独立。豊富な知識と技術を生かし、独立後はマイナスイオン発生装置付き空気清浄機や3次元立体複製技術など、さまざまな製品開発を手掛けてきた。現在は開発、試作に主軸を置いており、製品化は協力工場などに外部発注している。
■ワイヤで融雪
現在取り組んでいるのは独自に開発した「テクノワイヤ」を使った融雪システム。特殊な金属を絶縁樹脂で覆ったワイヤは、電気を通すと約60度まで発熱するため、ロードヒーティングや屋根の融雪などに用いることができる。
ワイヤそのものは外径1.3ミリの極細で軽量。従来のヒーター電力量の約6分の1という省電力で、ランニングコストに優れ、施工費用が安いのが特長だ。融雪以外でも、育苗や水耕などの保温・加湿用資材として農業面での用途が期待できるという。
ほかに、農薬散布などに用いる農業用小型リモコンヘリの開発も手掛ける。現在は水が1リットル入ったペットボトルを8本搭載して15~20分間の連続飛行も可能になり、実用化も近づいてきた。「将来的には、水と初期熱源だけで熱と電力を供給できる次世代型コージェネレーション(熱併給発電)システムも開発していきたい」と武田社長。
「虎は死んで皮を残すが、人は何を残せるか。世の中に役立つものを形にして残す。その積み重ねを大事にしたい」。子どものような笑顔でものづくりの夢を語った。
(ものづくり取材班)
【アルファ・テクノツール】 1989年8月に株式会社として創業。現在の社員数は2人、2014年7月期の売上高は3200万円。