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挑む、山形創生

第10部人を呼び込む(7) 訪日外国人の玄関口「空港」

2016/12/14 10:09
国際定期便が増加している仙台空港。インバウンドの拡大に向けて空港の役割は大きくなっている=宮城県名取市

 訪日外国人の玄関口となる空港。インバウンド(海外からの旅行)の拡大に向け、本県の山形、庄内両空港には国際チャーター便の拡充や、多くの海外都市と結ぶ羽田空港を経由した誘客促進に期待がかかる。今年7月の民営化後、国際定期便の増加に力を入れる仙台空港へ降り立った外国人観光客をどう呼び込むか。関係者が知恵を絞る中、新たな試みも動きだしている。

 東北の空を、世界の空へ―。民営化後、仙台空港の愛称を「仙台国際空港」としたところにも運営会社の意気込みが伝わる。メインの台湾便は週8往復、韓国便は週7往復が運航。仙台国際空港営業推進部長の岡崎克彦取締役は「爆買いブームは終わり、訪日外国人のニーズは日本の生活文化の体験に移っている。こうした体験ができる東北はこれからのインバウンドを支える」と見通す。

 今後も就航地の拡大と既存路線の拡充に努める方針だ。「観光客にとって直行便の有る無しはとても大切。香港やタイの定期便が新設されるよう航空会社に働き掛けたい」とする。

 本県を含む東北にとって仙台空港の存在は大きい。それは比較的離れた庄内にも影響を及ぼしている。県庄内総合支庁の担当者は庄内交通(鶴岡市)が仙台空港行きの高速バス新規路線運行に乗り出す動きを歓迎し、「個人旅行者が庄内を訪れやすくなる。旅慣れた外国人観光客に向けた情報提供も一層大事になる」と話す。

南東北で唯一

 一方、山形、庄内両空港には南東北3県で唯一、羽田間の定期便がある。県交通政策課は「世界有数のハブ空港である羽田とつながるメリットを生かせば、乗り継ぎによる訪日客増が期待できる」という。羽田便1日2往復の山形空港は乗り継ぎダイヤの利便性を生かしたPRを進め、羽田便4往復が運航されている庄内空港も乗り継ぎ利用を促す助成制度を用意。日本遺産の出羽三山をはじめ、豊かな食文化を資源にPRの強化を急ぐ。

 もちろん、インバウンドを考えれば、それぞれの空港がチャーター便を増やす努力を重ねる必要がある。山形空港の国際チャーター便は2015年度、14年度比約3倍の31便4354人が利用したが、その全ては台湾からだった。一方の庄内空港も台湾が中心だが、16年9月には韓国から10年ぶりに観光客を迎えた。県が韓国に配置する現地コーディネーターの存在などが実を結んだ形だ。来年3月には上海との相互乗り入れチャーター便の運航も決定している。

増える個人客

 課題は航空機を降りた訪日外国人と観光地をどう結ぶかだ。仙台国際空港の岡崎取締役も「東北観光にとって2次交通の整備は非常に重要」と指摘する。同空港では、海外の利用客はほぼ観光目的。今後は個人旅行客の割合が貸し切りバスなどを使う団体客を上回る見込みという。個人旅行客の快適な移動手段の確保は欠かせないとし、「例えばJR山形駅と仙台空港の直通バスがあれば、訪日外国人が山形周遊をしやすくなる」と説明する。

 本県の両空港も事情は同じだ。山形空港では発着便に合わせ、空港とJR山形駅をつなぐバスのほか、天童や東根各市などとの間を結ぶ定額制の乗り合いタクシー、本県を代表する蔵王温泉(山形市)や銀山温泉(尾花沢市)と直通の「観光ライナー」も運行されている。

 拡大傾向を続けるインバウンドの中で空港の役割は増している。ただ、玄関口の機能強化だけでは国外に対するアピールは弱い。観光地間を結ぶ2次交通整備をはじめ、それぞれの観光資源の磨き上げも求められている。

(「挑む 地方創生」取材班)

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