昔、朝日村の(※)大網の七五三掛さ注連寺ていう寺あっての、衰ろえだ事あったころの話。
その寺さ、たった1人の和尚さん貧乏ぐらししながら「アカ」ていう猫めんごがって飼っていだけど。ある晩げアカ、和尚さんさ「おれ、今まで和尚さんがらお世話なったさげ、恩返しする。下村の長者のじいさん近いうぢ死ぬようだ話聞いできた。その葬式の時、棺桶をおれ空さつり上げでおいで、和尚さん来てお経読んだら下ろすようすっがら」て言うけど。
2、3日すっど、下村のじいさん急に死んで葬式なったけど。その行列が墓の前まで来たば、急に黒雲出で、その中から鬼のようだ太って腕出はってきて、棺桶どこ雲までつり上げでしまったけど。みんなびっくりして、和尚さん方ふるえながらお経読んだども、棺桶とんと動がねけど。そえで「巫女」から聞いでみだば、和尚さん1人足りねがらだて言われだけど。
注連寺の和尚さんどご、ぼろ衣の貧乏和尚ばがして呼ばね事、みんな気づいだけど。そえでさっそぐ注連寺の和尚さんさ頼んで、来てもらったけど。
和尚さん、お経読み始めでしばらくしてがら、黒雲の方さ向いで「アカや、アカや、アカアカやあ」て唱えだば、棺桶スルスルど下りてきたけど。みんな「注連寺の和尚さんはただの和尚でねえ。ありがでえ、ありがでえ」て言って、和尚さんいっぱいのお金もらって寺さ帰ったけど。トンピンカラリネッケド。