むがしのごんだど。殿さまが国中に触れだど。「灰で縄をなったら、何でも欲しいもんを褒美にやる」てだど。嫁さまは「そんなの何でもない。固え藁で、じょりじょり縄ばなったら、塩水に一晩つけで、それを焼ぐど、灰縄になっから、やってみれ」。
夫は、こうしてでぎだ灰縄を三宝さのせで、殿さまさ差し出した。
「よぐでぎだ。では、何が欲しい」て殿さまが言うげんど、そごまで考えでこねがったもんで「何でもええでごぜぇます」て言うたど。
「んじゃ、これをやるごどにする」て、鏡をくれだんだど。「家さ帰って、そっと開げでみろ」て、殿さまの言うどおり、家の一番奥の間の、上段の間で開げでみたら、亡ぐなった親父の顔だったがら、それがらは、田や畑から帰ってくっど、上段の間で鏡にうづった自分の顔ば親父だど思って、「親父、いま帰った」て言って、にこにこして出でくる。それを見だ嫁は、上段の間さ入って鏡を見つけて見たば、何ていう美女だったもんだがら、「あだえきれいな女を上段さ、隠していだんだな」て、(※)いびねたら、「とんでもない、おらの親父だ」て、2人で鏡ば見だば、夫と嫁の顔だったもんだがら、2人で大笑いして、それからは(※)よくせき仲よぐなったど。とうびんと。