むがすあったけど。「おら家の山の田んぼだげでも、81枚の田んぼある。娘も年ごろだがら、婿に来てくろ」て、村の大金持ぢに話あったもんだがら、喜んで婿さ入ったんだど。
「では、まず今日の仕事は、山の田んぼば(※)うなうごどだ。確か、81枚あるはずだがら、よっく数えで。81枚だぞ」て言わっで、頑張って出がげだど。
「ほんじゃら、まず蓑笠ばこごさ脱いで、やっか」て、鍬をふるって掘り返していったど。とぎどぎ嫁さまの顔ば思い出して「少しでも早く終わして、家さ戻らんなね」て、昼休みもしねで、やった、やった。んだもんだがら、お日さまが西に沈まねうぢに、終わってすまたんだど。
「確か、81枚あるて念押さっできたがら、数えでみっか。1枚、2枚、3枚…」て数えだげんども、80枚しかないんだど。
「親父さまも年だから、80枚ば81枚て数え違いしてだんだべ。では帰るとするが」て、蓑笠をひょいと取り上げでみだば、そごさ小っちゃこい田が1枚残っていだんだけど。
むがすは米が税金の代わりだったもんで、田んぼになるようなどごはみな(※)棚田にして米作ったもんで、小っちゃな田は蓑笠でかぐれるぐらいな田もあったていうはなし…。とうびんと。