第63回県冬季ロードレース大会(山形新聞、山形放送、山形陸上競技協会主催)は29日、上山市金瓶などをスタートして山形市の山形メディアタワー前をゴールとするコースで3年ぶりに競技を行い、ランナーが冬空の下を力強く駆け抜けた。
個人、団体の計8部門で競った。一般男子10キロは荒生実慧(まさと)(東洋大・酒田南高出)、高校男子10キロは庄司瑞輝(酒田南)、中学男子3キロは菅野元太(山形十)がそれぞれ制した。一般・高校女子5キロは柏倉四季(山形中央高)、中学女子3キロは荒木結心(ゆね)(川西)が勝った。
レース後、山形メディアタワーで表彰式が行われ、大会会長の寒河江浩二山形新聞社長・主筆(山形新聞グループ経営会議議長)、大会副会長の板垣正義山形放送社長、佐藤広志山形陸上競技協会長が各部門の優勝者に表彰状などを手渡した。主催者を代表し、寒河江会長は「大雪や寒波の影響も心配されたが、こうして3年ぶりに開催でき、皆さんの走りは沿道に感動を与えてくれた」と選手の奮闘をたたえ「互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、全国の舞台で活躍することを期待している」と激励した。
荒生(東洋大・酒田南高出)復活V・一般男子10キロ
【スポット】一般男子10キロは荒生実慧(東洋大・酒田南高出)が社会人の実力者たちを抑え、栄冠をつかんだ。「(29分台の)タイムは想定よりも良く、優勝したことは一つの自信になる」。今回の優勝で中学、高校を含む全3部門制覇を成し遂げ、たくましくなった姿を示した。
年明けの東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)でメンバー入りしたが、実走できなかった。強豪校でエントリーした力を示すため、「ここで勝たなければ」と自らを鼓舞したという。スタート後は他選手の動きを警戒しながら、大学の先輩に当たる大沢駿(山形市役所AC)とレースを引っ張った。7キロ手前で単独走となってもペースを維持。「今の自分の力を知る機会」と臨んだレースで、安定感は抜群だった。
中学男子3キロの大会記録保持者で、高校は1、2年で頂点に立った。その後、交通事故に伴う右足首の負傷がなかなか完治せずに苦しんだ。箱根路を走ることはかなわなかったが、競争に刺激を受け、1万メートルの自己記録を1分近く更新した。自らの成長を諦めなかった。
今春、地元に戻って一般企業に就職し、社会人ランナーとしてスタートを切る。「山形の陸上界を盛り上げ、社会人として自己ベストを目指す。働きながら活躍したい」と決意を口にした。
柏倉(山形中央高)首位譲らない、一般・高校女子5キロ
高校1年生ながら堂々の走りで圧勝した一般・高校女子5キロの柏倉四季(山形中央高)。終始トップの座を譲らず、「最初から速いペースで入った。後半はきつくなったが、17分を切れたので悪くない。優勝できてうれしい」と笑顔を見せた。
先の全国都道府県対抗女子駅伝は、初出場で重要な2区(4キロ)を任された。大学生や実業団の選手が多い区間だったが、周りの速さについていけず、結果は13分29秒の36位。力の差を痛感した。
今大会は1キロ・3分20秒のペースを目標に、序盤からスピードを上げた。1キロ過ぎで後続を引き離し、独走態勢となった。途中でやや苦しんだものの、最後の1キロは持ち直した。半田亘監督は「気温が低い中、自分のペースで走り切った。都道府県対抗駅伝は全国トップレベルの速さを体感でき、いい経験になった」と振り返った。
柏倉が次に見据えるのは、今夏の全国高校総体(インターハイ)。「全国で戦うには、スピードや持久力など総合的にレベルアップする必要がある。決勝を目指し、まずはスピードを強化し、終盤でもしっかり勝負できるようにしたい」と意気込んだ。
新星・菅野(山形十)ナイスラン、中学男子3キロ優勝
【ヒーロー】本格的に競技に目覚めて、1年に満たない。それでも中学男子3キロの菅野元太(山形十)は大会記録(8分51秒)と1秒差の好タイムでゴールを駆け抜けた。潜在能力の高さを見せつけた格好だが、本人は「悔しいし、情けない」。さらなる高みを見据えるからこそ、記録更新という最低限の目標に届かず、思わず顔をしかめた。
序盤は周囲の出方をうかがい、1キロ付近で抜け出した。「あとは自分の走りに集中した」。安定したピッチを刻み、当然のようにトップでゴールテープを切った。強さが際立った展開にも不本意な様子で「体が動かず寒さ対策が不十分だった」と後悔ばかりが口を突いた。
母は実業団の名門・第一生命で活躍し、1997年の東京国際女子マラソンを制した舟形町出身の(旧姓・伊藤)真貴子さん。父の学さんも県縦断駅伝競走大会で長く新庄・最上チームを支えた。それでも、本人が本格的に陸上に取り組んだのは昨春から。駅伝を通じて走る楽しさを知り、野球部から転部した。
初めは「全国で活躍できたらいいな」という思いだったが、レースを重ねるごとに才能が開花した。昨夏の東北中学校大会男子3000メートルで日本中学歴代2位の8分15秒21をマークし、一気に全国区へと駆け上がった。昨年末の全国中学校駅伝では26人抜きの快走で3区の区間新記録を樹立するなど、存在感は増すばかりだ。
競技歴が浅く、「母からはいつも『レース前の準備が大事』とアドバイスを受けている」という。それだけに「失敗はしっかり生かさないといけない」と肝に銘じる。高校での活躍よりも、その先に目線を向けて飛躍を期す。目標は「日本を代表する選手になる」。あどけなさの残る15歳の夢は膨らむばかりだ。
スパート勝負、荒木(川西)が制す・中学女子3キロ
中学女子3キロの荒木結心(川西)はスパート勝負を制した。「今までぎりぎりで優勝に届かなかったのでうれしい」と、フィニッシュ後はすがすがしい表情だった。
全国都道府県対抗女子駅伝は、同じ3キロの3区を担った。自身初の全国規模の大会で、同年代トップレベルの選手からフォームを学び取ったという。「腕の振りを後ろに」を特に意識し、推進力が増すよう修正を加えた。
今大会は序盤に飛び出したライバルの背後にぴたりと付いた。2人の首位争いが続き、ゴール目前のカーブ付近で加速し、先頭に立った。昨年の県中学総体の800メートル、1500メートルで競り負けた相手を最終盤に振り切った。
仲間とたすきをつなぐ駅伝に魅力を感じ、県内強豪校への進学を目指す。大会翌日から面接や学力検査が相次ぐ。勝利の余韻に浸る間もなさそうで「帰って勉強します」と笑った。
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