長井市のけん玉メーカー山形工房(梅津雄治社長)は、けん玉作りで培った木材加工技術を生かし、木製バットの製造に乗り出す。使用する木材は東北産にこだわり、「『メイドイン東北』で、将来的にはプロ野球でも使用される品質を目指したい」と、けん玉製作との「二刀流」に挑む。
技術は十分、東北産木材使用
梅津社長は、主力商品であるけん玉の普及活動に取り組みつつ「会社として二の矢、三の矢となる武器を持ちたいと考えていた」。曽祖父が手彫りで作っていたとの話をヒントに、良質な木材の産地である、東北生まれのバットの製造を思い立った。
製造に必要な技術力は、長年のけん玉作りにより、全て手にしていた。木目の真っすぐな木材を見極める目利き力があり、材料であるカエデやタモの木はけん玉の材料でもあるため、仕入れ面でも不安はない。0.1ミリ単位で仕上げる精緻な加工技術に自信があり、既存設備を使って試作できることも背中を押した。
野球は人気スポーツであり、木製バットは使い続けると折れるため、消耗品として継続的な需要が見込めると踏んだ。試合で木製を使用するのはプロ野球や社会人野球、大学野球が中心だ。主に金属製を用いる高校野球などでも、芯で捉えないとボールが飛びにくい木製の特性を、練習に活用するケースがあるという。まずは中高生の練習用としての用途から、徐々にターゲットを広げていく考えで、販売価格を検討している。
県工業技術センター(山形市)には、東北産広葉樹の材料としての適性について研究を依頼しており、木材の強度やスイングのしやすさなど、これまでに良好な検証結果が報告されている。専用設備の納入を待ち、今春にも生産を始める計画だ。
地域の野球少年たちの健全育成に貢献する狙いもあるといい、梅津社長は「まずは地元の中高生や少年野球で使ってもらうことが目標。バット作りに挑戦することで技術力が高まり、結果的にけん玉の品質向上にもつながるはずだ」と話している。
【メモ】山形工房は1973(昭和48)年に創業し、今年は50周年の節目に当たる。競技用けん玉の生産で国内トップシェアを誇る。新型コロナウイルス禍で創設された国の補助事業を活用し、長井市寺泉の社屋西側に昨年12月、木造平屋のバット工場を新設した。
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