英国人旅行家のイザベラ・バードの研究家・東北文教大客員教授の渋谷光夫さん(75)=山形市=がアルカディア街道を多角的に深掘りした「山形のまちとイザベラ・バード」を発刊した。明治期に本県を旅したバードの足跡を交え、旧県庁舎(文翔館)や旧済生館本館(市郷土館)の歴史的な変遷をひもとき、郷土の魅力を再発信している。
渋谷さんのバードに関する著書は2冊目。今回は写真や絵画、地図など多数の史料を載せ、「バードが歩いた山形のまち」「アルカディア街道の魅力」など5章構成で紹介している。バードが歩いたとされる山形市街地の街並みと変遷について、初代県令三島通庸が旧県庁舎を旧城郭から離れた場所に建設した背景などを交えて考察し「藩政治との決別が不可欠と考え、新開地に県都づくりをおこなった」と記す。
バードが視察した旧済生館本館に関し、1965(昭和40)年に解体が適当との審議会答申から一転して翌年に国重要文化財に指定された経緯を説いている。60年代は高度経済成長期でいにしえを守る意識が薄れ、新しいものを望む世相だったとし「指定は山形文化を守り抜き、勝ち取った市民と県民の力であった」とまとめている。
日本奥地紀行で置賜地方を「エデンの園」や「東洋のアルカディア」と称賛した要因に、多種多様な農産物が栽培され、心温まるもてなしがあったことなどを挙げる。さらに、バードが前書きに「my work」(わたしの仕事)と記した理由を論じ「バードは日本の状況を探る情報収集者ではなかったのか」との仮説を説明している。
渋谷さんは「山形を知ることが郷土愛を育むことにつながる」とし、若い世代が郷土史に触れるきっかけにしたいと続ける。
【メモ】イザベラ・バードは1878(明治11)年、東日本と北海道を旅し、後に「日本奥地紀行」を著した。渋谷さんは「アルカディア街道IB倶楽部」の会長を務め、長く研究を続け、2011年に「イザベラ・バードの山形路―『アルカディア街道』散策のススメ」を出版。今回の「山形のまちとイザベラ・バード」(2860円)は県内書店で販売している。
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