最上県勢懇話会の第254回例会が23日、新庄市の新庄信用金庫本店で開かれた。早稲田大名誉教授の佐藤滋氏が「環境の時代と最上エコポリス―構想30年に思う」と題し講演した。佐藤氏はエコポリス構想を、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の理念を先取りする取り組みだったとし、「構想策定からこれまでの30年を総括し、次代のまちづくりにつなげてほしい」と述べた。県勢懇話会最上支部長の井上洋一郎新庄信用金庫理事長が講師を紹介した。以下は講演要旨。
エコポリス構想は環境と調和した地域づくりを指す。最上地域は鳥海山や月山を眺めることができ、その間を川が流れ、山が取り囲む中に集落がある。それぞれの地域に個性があり、豊かな自然を持つなど、円でつながる全体性がある。これらの特徴を大切にするのが構想の基本的な考え方だ。
新庄の城下町は、扇状地の複雑な地形に合わせた形にしたと推察される。東南に位置する鳥越八幡神社から見ると、城を見下ろす形になり、後ろにランドマークとなる鳥海山が望める。風が行き来し、水が流れる場所にあるなど生態的な造りをしている。こじつけかもしれないが、エコポリスの考えを、当時から大事にしていたのではないか。
最上地域には、白壁と切り妻屋根の住宅が立ち並ぶ金山町の景観や大蔵村の清水城跡など、素晴らしい風景が各地にある。これらを生かす形でエコポリス構想を練り、エコパーク(鮭川村)など、各自治体が施設を整備した。現在もそのほとんどは生かされている。リサイクルやエネルギーなどといった各エコ産業をつなげようともした。有機的な動きができれば、もっと良くなると思う。
エコポリス構想を基に、市町村がそれぞれの計画を育ててきたことに加え、最上地域はまちづくりの全体像を持っている。新庄市では歴史的風致維持向上計画も進んでいる。先日、市エコロジーガーデンで始まったkitokito(キトキト)マルシェを訪れた。若い出展者は「交流して楽しむためにやっている」と話していた。全国的にも若い人が地方に出てネットワークを構築し、ユニークな活動に取り組んでいる。こうした若い人を応援してほしい。
SDGsはエコポリス構想に書いてある内容で、最上地域では常識的な話だ。県立新庄病院の移転・開院や、東北農林専門職大(仮称)の開学など、最上地域を取り巻く環境は次の段階に入っている。エコポリス構想とは別のやり方で、新しい人たちが新しい動きを始めるだろう。エコポリス構想など、これまでの30年にあったことを知り、次につなげてほしい。
最上エコポリス構想 エコポリスはエコロジー(環境)とポリス(街)の合成語で、最上8市町村でつくる最上広域市町村圏事務組合と県が1993年3月に策定した。構想の下、各市町村はシンボルとなる交流施設を整備。森林を活用した環境学習拠点のネットワーク化、エコ産業の研究開発などに取り組んだ。佐藤滋早稲田大教授(当時)の都市計画研究室が基本調査に取り組み、佐藤教授が全体を統括した。
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