「東部戦線」戦地の惨状生々しく ウクライナ作品、監督「現実知り、問題見つめて」

2023/10/10 07:22
戦場での体験や作品への思いを語るイェウヘン・ティタレンコ監督=山形市

 山形市で開催中の山形国際ドキュメンタリー映画祭で、ロシアの軍事侵攻が続くウクライナの作品も上映されている。その一つ「東部戦線」は、共同監督のイェウヘン・ティタレンコさん(35)が救護隊として赴いた戦場や人々の日常を映し出す。ティタレンコ監督は「今起きていることは人ごとではない。この映画を通してウクライナの現実を知り、自分たちの身に降りかかるかもしれない問題を見つめてほしい」と話す。

 ティタレンコ監督が救護隊に参加したきっかけは、2014年のロシアによるクリミア半島の強制併合だった。歴史的な事件を自分の目で見て記録するため、ドキュメンタリー作家として紛争の現場に出向いた。有志による救護隊の活動を目の当たりにし「もっと自分がやるべき大事なことがある」と思い、加わるようになった。22年2月24日、ロシアの侵攻が始まった。家族を西部に避難させて首都キーウに行き、一員として戦地に向かった。

 映画は2月24日から半年間、激しい攻撃を受けたウクライナ東部で捉えた生々しい現実を突きつける。胸に着けたスマートフォンや小型カメラで撮影した。「メディアでは報じられない、内側から見た現状を見せたい」と銃弾や砲撃が飛び交う中で、必死に担架や車両で負傷者を運び出す様子や生死をさまよう負傷者を乗せた車両内の切迫感、銃弾や地雷に倒れた兵士らの惨状を伝える。

 戦場の様子と同時に、つかの間の休息を友人や家族らと過ごす兵士らの日常も映す。「戦っているのは特別な兵士ではなく、同じ一般市民。彼らの心の内もより理解できるのではと思った」。一方、平穏な時間の中でもロシアによるプロパガンダに振り回された家族らの体験談や、死を意識した会話が繰り広げられる。「笑顔の陰で戦場に戻らなければいけない恐れは常にある。本当は誰も戦いたくないが、家族や国を守るために出て行かなくてはならない現実がある」と嘆く。

 再び向かった最前線で過酷な救護活動が進行中のまま、映画は終わる。「この状況が今も続いているということを、それぞれに感じてほしい。この暴挙を許してしまえば、今後、他の国でも同じことが起こる可能性がある。この映画は警告でもある」と、祖国と世界の平和を願った。

山形国際ドキュメンタリー映画祭

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