県立産技短大校30年~期待を背負って【上】 活躍する卒業生

2023/11/28 14:09
設計図を広げて打ち合わせを行う(左から)赤間明日美さん、朝倉愛さん、渡辺美樹さん=山形市・弘栄設備工業

 全国初の県立職業能力開発短期大学校として1993年に開校した県立産業技術短期大学校(山形市、佐藤俊一校長)が、今年創立30周年を迎えた。開校以来、2810人の卒業生を県内産業界などに送り出し、就職率はほぼ100%を維持している。人手不足が慢性化する現在、企業からの期待が大きく高まる一方、高校生に対する認知度不足などの課題もある。同校ならではの魅力と課題を検証する。

 「御社のアプリ開発環境は」「普通旋盤とフライス盤、学校ではそれぞれどれくらいの技能レベルを身に付けた?」。今年3月、山形市内で開かれた合同企業説明会では、大学生向けではあまり聞かれないような実践的な会話が学生と企業の間で飛び交っていた。参加学生は産技短の1年生。主に高校卒業後の2年間を学ぶ産技短生にとって、この説明会が就職活動の本格的なスタートになる。

 少子化や大学への進学率の上昇などを背景に、県内では人材確保が深刻な課題になっている。産技短で実践的な技術と知識を身に付けた学生は県内企業にとって、即戦力となり得る貴重な人材だ。説明会への参加企業は増加傾向にあり、今年は製造業や建設業、情報通信業など幅広い業種から過去最多の222社が参加した。対する学生は約100人。1社1人の採用と仮定しても、半数以上の会社が人材を獲得できない状況で、激しい獲得合戦に企業担当者の説明にも熱がこもっていた。

 産技短には、380の企業・団体で構成する「教育研究振興会」という組織がある。教育や就職など幅広く支援する組織で、同校卒業生の約9割が会員企業に就職している。会長を務める後藤完司山形建設会長は「産技短生は技術的な部分をしっかり身に付けているため、安心して採用できる」と話す。卒業生の活躍が新たな採用への安心感にもつながる好循環が生まれているという。

 山形市の弘栄設備工業は、社員139人のうち19人が産技短出身。グループを含めると、25人の卒業生が活躍している。男性中心のイメージが強い建設業界だが、女性の卒業生3人が在籍し、設計積算部や工事部の技術者として会社を支えている。

 谷地高から産技短に進んだ朝倉愛さん(43)は「配管を切ったり組み立てたり、実技も含めて幅広く経験できた。2年間で4年分学べたように思う」と振り返る。就職氷河期に当たる時期だったが、周囲も含め就職活動は比較的スムーズだったという。赤間明日美さん(33)は、学費の安さや手に職が付くことなどを魅力に感じて楯岡高から進学した。「幅広く学んだことが、さまざまな仕事への対応力につながっている」。山形中央高から産技短に進んだ渡辺美樹さん(29)は姉も産技短出身。中学時代から進学を決めていたといい「産技短でしっかり勉強すれば、即戦力として確実に社会で活躍できる」と胸を張る。

 同社の川村淳子法務コンプライアンス室長は「実践的な勉強をしているので適応が早く、キャリアプランも描きやすい」と採用側の立場から話す。ただ、採用企業からの人気と入学希望者が比例していない状況にはもどかしさを感じている。同校の定員は120人だが、入学者は100人を割ることもある。

 知名度と、県民の産技短への理解度の低さが課題だ。「高校生はもちろん、小中学生や親世代にも『こんなに良い学校がある』ことをアピールしてほしい」。優秀な人材を一人でも多く確保したい県内企業にとって、切なる願いだ。

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