2022年10月3日(月)
山形新聞ロゴ
[PR]

「大きく、なれた…!(涙)」骨盤がないヨチヨチ子猫の成長に感激、2本の前脚だけで幸せに向かって進め

保護当時、骨盤のない子猫モズクはとても小さく弱々しかった(写真:ねこけんブログより)
 多くの猫を保護しているNPO法人『ねこけん』には、病気や障害を抱えた猫もいる。その中でも初めてのケースだったのが、骨盤のない子猫「モズク」だ。動かない2本の後ろ脚と発育不足の小さな体。本当にこの猫は生きていけるのか、幸せになれるのか…。その不安がブログに書き込まれてから9ヵ月。モズクの身には意外な展開が起こっていた。代表理事・溝上奈緒子氏に話を聞いた。

【ビフォーアフター】そして9ヵ月後…「で、でっか!」骨盤ないヨチヨチ子猫が予想外に立派に成長!!

■骨盤がなく動かない後ろ脚…、「譲渡は難しいかもしれない」

 『ねこけん』ブログにモズクが初めて登場したのは、2021年11月。ボランティアメンバーが見つけた後ろ脚が動かない子猫は、なんと骨盤自体がなかった。さまざまな障害を持つ猫を保護してきた『ねこけん』でも、初のケースだったという。

 動かない2本の後ろ脚は前に突き出され、前脚だけでなんとかヨチヨチと歩ける状態。保護したときは生まれて3~4ヵ月に見えたが、食事がまともにとれなかったであろうことを考えると、実際は5~6ヵ月経っている可能性もあったそうだ。きっと外では長く生きられない。メンバーに発見されたのは幸運と言うしかないが、だからといってモズクの未来が完全に開けたわけではなかった。

 骨盤がないため、自力で排泄ができない。人間が圧迫排尿をする必要があり、おむつも付けなくてはならない。排便に問題が出ないように食べ物にも制限があるし、大好きな『ちゅ~る』を食べられるのも一口だけだ。

 そんな重い障害のあるモズクだったが、ヨチヨチと歩きながらも表情は好奇心旺盛な子猫そのもの。前脚だけで一歩、また一歩と進む姿には、誰もが胸を打たれた。ただ、モズクがどのように育っていくのかはわからない。溝上代表も当時、「重大な病気・障害を持つ子は、里親さんに譲渡するのが難しい場合も多い。そのため、モズクが寿命をまっとうするまで、うちで面倒を見たり、ボランティアメンバーが引き取る可能性も高い」と明かしていた。

 そんなモズクの予想外な姿がブログに再登場したのは、保護から9ヵ月が経った今年の8月のことだった。

 「この大きなフワフワ君はどちらさん?」と記されたブログには、柔らかそうな毛並みに立派なヒゲ、クリっとした目の大きな猫の写真が添えられていた。その前脚は力強く体を支えているが、後ろ脚は不自然に投げ出されている。そう、この大きな猫こそがモズクの成長した姿だった。

 「両腕の力で体を動かして、たくましく成長! おむつは取れませんが、そんなの生きる上でなんの問題にもなりません! すごいぞ! モズク!」。そう記された文面からは、ボランティアメンバーの喜びと興奮が、ひしひしと伝わってくる。

 さらに、モズクは立派に成長しただけでなく、なんとトライアル飼育が決まったという。しかも、モズクと仲良しの猫「くるる」と一緒。この猫もまた、おそらく脳の異常で小刻みに顔が揺れてしまうが、とびきり可愛い猫だ。

 「昔は、こうした障害のある猫はなかなか譲渡できなかったんです。ボランティア側でも諦めている節もありました。でも今は、諦めずに譲渡会などで紹介することで、『家族に迎えたい』と言ってくれる方が増えてきました。これは、日本に動物愛護の意識が根付いてきた証拠だと思います」

 障害や病気がある猫を迎えるには、飼い主側にもある程度の覚悟がいる。ケアの仕方を学び、病院に連れて行き、普通よりは手間もお金もかかることは確かだ。

 「譲渡会ではそのあたりもしっかり説明し、ケア方法なども伝えます。でも、理解してもらえれば、他の猫となんら変わらない愛しい存在。リスクはあっても、それを承知の上で家族に迎えるという方が増えてとても嬉しいですね」

 骨盤がないという大きな障害を抱えながらも、厳しい外の世界を生き延び、人間に救われ、さらに新たな家族を見つけようとしている猫、モズク。その2本の前脚はきっと、自分の体を支えるだけではなく、みずから幸せをつかみ取りにいく力を秘めているのだろう。一歩、また一歩前へ。モズクの前進は、これからも止まることはない。
公開:2022-09-23 09:11
更新:2022-09-23 09:11
ギャラリー
[PR]
[PR]
SDGsフェスタ
[PR]
[PR]
[PR]