ここが見どころ[5]

2023/10/2 16:41

【やまがたと映画】高橋卓也氏が遺したもの

 本県にゆかりの深い映画や映像記録を通じ、〈山形〉を再確認するプログラム「やまがたと映画」。今年は、昨秋急逝した高橋卓也氏の追悼を主たるテーマに、4本の作品を上映する。

 高橋氏は映画祭山形事務局長を10年にわたって務めた人物で、当プログラムの発案者でもある。退任後はプロデューサーとして「世界一と言われた映画館」や「紅花の守人(もりびと) いのちを染める」など、山形を発信する映画の製作を続けた。彼が映画祭に、そして山形に遺(のこ)したものを作品から再確認してみたい。

「無音の叫び声」の一場面(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

 「無音の叫び声」(監督=原村政樹、122分)は、農民詩人・木村迪夫氏の半生を通して、日本の農業や経済を見つめ直す珠玉の長編。この続編ともいうべきテレビドキュメンタリー「ひのまる なだて あかい」(50分)も同日に上映される。併せてご覧いただければ、もう一つの〈山形史〉に驚くはずだ。

 「わらびのこう 蕨野行」(125分)は山形県内での1年にわたるロケに際し、高橋氏はじめ有志結成の団体が全面協力した劇映画。監督の恩地日出夫氏は2009年の本映画祭で日本映画監督賞の審査員を務めた人物でもある。恩地監督も昨年に逝去され、今回は図らずも2人の追悼上映となる。市原悦子らの名演に浸りつつ、山形の美しさを実感してほしい。

 注目作は、47年ぶりに発掘された幻の作品「雪の詩」(監督=波多野勝彦、80分)。大蔵村肘折地区で撮影された本作には、同地区の住人が数多く出演している。半世紀前の風景と、そこに暮らす人々の生き生きとした姿をその目で確かめていただきたい。山形には、あなたの知らない美しさがまだある。(やまがたと映画コーディネーター・黒木あるじ)

【街を見つめる人を見つめる】ボーダーレスな世界、照射

 昨年春、私がこのプログラムに参加した時に決まっていたことは「ユネスコ創造都市ネットワークに映画分野で加盟している都市で制作された映画(映像作品)」というだけだった。ドキュメンタリー映画祭なのに、ジャンルは不問。あまりに漠然としているので、「街と人」をテーマとした。加盟都市それぞれの町の魅力、そこに住む人たちの息遣いを感じる作品、それが狙いだった。

 そして公募で集まった作品の中から選んだのが、今回の8作品である(「映像で山形ルネッサンス」は除く)。ドキュメンタリーだけでなく、ポーランド・ウッチから応募のドラマ「フルーツと野菜」(監督=マチェイ・ヤンコフスキ、26分)、アニメーション「コーラホリック」(監督=マルチン・ポドレツ、11分)もあり、一見バラバラのようだが、選考後に共通点があることに気が付いた。《ボーダーレス》である。

「同じ屋根の下」の一場面(山形国際ドキュメンタリー映画祭提供)

 例えば、中国・青島の応募作品「同じ屋根の下」(監督=王瑜、20分)は、マルセイユにあるアパートの一室を舞台にしたドキュメンタリーだ。父とともに出稼ぎにきている中国人姉妹の対話、それぞれの電話のやりとりから、遠距離恋愛中のボーイフレンドとの関係や、異国での職場の様子、そして故郷・中国への想(おも)いがじわりと浮かび上がってくる。遠く離れたフランスにいながらも、アパートの一室はまさに中国。国境、都市などでは容易に区切ることができない、まさに《ボーダーレス》な作品だ。そしてその他の7作品も同様のテーゼを内包している(それはスクリーンで観(み)て、見つけてほしい)。

 狙い通りに《人の営み》、そして《普遍性》を持った作品がそろったと自負している。同時に作り手たちが描きだした《ボーダーレス》な世界=作品とスクリーンで出会ってもらいたい。(街を見つめる人を見つめるコーディネーター・中村高寛)

 ◇上映日程

 【やまがたと映画

 ▽無音の叫び声=10日午前10時15分

 ▽ひのまる なだて あかい=10日午後1時半

 ▽わらびのこう 蕨野行=10日午後6時

 ▽雪の詩=11日午前10時15分

※場所は全て市民会館

 【街を見つめる人を見つめる

 ▽フルーツと野菜、コーラホリック、呼吸=7日午後5時半(フォーラム山形)8日午後1時(やまがたクリエイティブシティセンターQ1)

 ▽同じ屋根の下、憧れ=8日午後3時(やまがたクリエイティブシティセンターQ1)9日午後5時半(フォーラム山形)

 ▽水道、ボヤ、八月の終わり=6日午後5時半(フォーラム山形)8日午前10時(やまがたクリエイティブシティセンターQ1)

※当プログラムは全て入場無料

山形国際ドキュメンタリー映画祭

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