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日東ベスト社長
大沼一彦氏
大沼一彦氏
【インタビュー】
 -業界の現状を踏まえ、どんな人材を求めるか。

 「業務用食品メーカーは多くの中堅企業がM&A(企業の合併・買収)、業務提携を進め、系列化が進んでいる。当社は単体で経営する数少ないメーカーで、その中で戦うには商品の差別化、付加価値が必要だ。食品に関しては、家庭では『作る』から『買う』に変わり、料理をせず総菜を買う人が増えている。消費者ニーズは常に変化しており、それに対応して進化する人材を求めたい。自分で考え行動する意欲、コミュニケーション能力も欠かせない。他者の思いを分かり、いたわる気持ちが大切だ。食品業界に限らず、人手不足は深刻。採用する人を企業が選ぶのではなく、企業が選ばれる時代。働き方改革、作業環境改善を進め、選ばれる企業になる」

 -進化するためにはどういう能力、努力が必要か。

 「当事者意識を持ち、仕事に向き合う意識を求めたい。常に自分には何ができるかを考えてほしい。今、新たな仕組みを作っても、明日になれば過去のものになる。それならば、また新たなものを作ろう-という前向きな姿勢、日々改善する考え方が大切だ」

 -仕事上で最も影響を受けた人物は誰か。

 「創業者の内田一郎氏。私が新人時代の社長で、ある日『家庭からまな板が必要なくなる』と言われた。家庭で料理をしなくなる時代がくると既に予想していた。また、創業当初は缶詰を製造し利益を上げていたが、缶詰販売は下火になるとみて、冷凍食品製造へと転換した。卓越した先見の明を持っていた。当社文化祭は内田氏が地域貢献、地域との一体感創出を目的に始め、今年42回目を迎え、約8580人の来場をいただいた。寒河江まつり神輿(みこし)の祭典にも初回から参加し、35回目になった。また、従業員に対する気配り、優しさは群を抜いていた。『日東ベスト保育園』は1969(昭和44)年に設け、事業所内保育所のはしりだ。工場建屋に壁画を描いたのも、従業員に明るく楽しく、心に潤いを持って働いてほしいとの思いから。地域との連帯感を高め、従業員が安心して働ける環境整備を進めてくれた。当社の基盤を築いた、尊敬する人物だ」

 ★大沼 一彦氏(おおぬま・かずひこ) 寒河江工業高卒。1970(昭和45)年入社。取締役天童工場長、常務生産副本部長兼天童工場長、専務生産本部長を経て、2013年6月から現職。寒河江市出身。66歳。

 ★日東ベスト 1937(昭和12)年10月、横浜市保土ケ谷区で農産缶詰製造の日東食品として創業。49年に本社を寒河江市に移した。68年に冷凍食品部を発足し、94年に現社名となった。本社工場は建築家の故黒川紀章さんが設計した。資本金は14億7400万円。従業員数は1119人(今年3月現在)。国内外に製造工場、営業拠点がある。本社所在地は寒河江市幸町4の27。

【私と新聞】地元知るため欠かせない
 「山形新聞は地元の情報を知るために欠かせない存在」と語る大沼一彦社長。地域行事や、県内企業の動向、事件、事故に関する記事の他、おくやみ欄によく目を通すという。

 「商談時は仕事の話ばかりでなく、山形の話題でも盛り上がりたい」と、話題づくりにも生かす。山形の話題をきっかけに相手と親密になり、仕事に結び付くこともある。また「文字が大きく、くっきりとして見やすいのは、ありがたい」とし、高齢者への配慮も行き届いていると評価する。

 ゴルフを愛好する大沼社長。月例会の結果が紙面掲載され、知人から「載っていたね」と声を掛けられることがあるという。「山形新聞は多くの人に読まれているんだね」と笑う。

【週刊経済ワード】統合型リゾート施設(IR)
 カジノのほか、テーマパークや劇場、ホテルなどが一体となって整備された施設。米ラスベガスが有名で、シンガポールや韓国などでも運営されている。昨年末に施行された「IR整備推進法」は観光振興などの理念を定めた議員提案による基本法で、実際の制度設計は政府が「1年以内をめど」に提出する実施法案に委ねていた。政府は当初、年内に同法案の審議入りを目指していたが、衆院解散・総選挙があり、法案審査などが大幅に遅れている。「早ければ2020年」としていた国によるIRの地域選定スケジュールにも影響が出そうだ。
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