NIBフロントライン

滝の湯ホテル社長
山口敦史氏
山口敦史氏
【インタビュー】
 -宿泊業界の現状は。

 「人口減少で国内旅行は減速する一方、インバウンド(海外からの旅行)が増えている。東北は東日本大震災や原発事故の影響もありインバウンドは後発で、伸び率は高いが全国に比べればまだまだというところ。大きな課題として挙げられるのが人手不足だ」

 -自社の現状は。

 「人手不足は会社の中にいるスタッフをもっと生かせば解消できると思う。できるところはどんどん機械化したい。中規模以上の旅館では事務的な作業などにIT、人工知能(AI)を導入し、余裕が出た分で接客を充実させるなど、働き方改革を図らなければいけないと考える」

 -求める人材と育成方法は。

 「私が好きなのは変革を恐れない人。そういう人と一緒に新しいことに挑戦し、失敗したり成功したりして前に進んでいきたい。従業員教育は『滝の湯流のおもてなし』について、目指すところをきちんと示すようにしている。例えば若いスタッフには『お父さんやお母さんの友達が自宅に泊まりに来たらどうするか考えて』と伝える。お客さまのアンケートは、セキュリティーが保障されているスマートフォン上のアプリで共有する。ほめる人をみんなでほめ、クレームもみんなで共有する。お客さまの声を真摯(しんし)に受け止めて共有し、新しいサービスにつなげることの繰り返しで全員で高め合っていく」

 -宿泊業にも拡大された外国人労働者の受け入れについてどう考えるか。

 「受け入れを考えている。日本人も同じだが、重要なのはここで働いてハッピーになれるかどうか。母国に戻った時、また日本に行きたい、働いた滝の湯に行きたいと思ってもらえることが大事。これまでも外国人留学生のインターンを受け入れてきた。文化や政治、考え方が違う人たちと一緒に仕事をするのは最初は大変だが、慣れると全く平気だ。滝の湯のスタッフには異文化の人と働くことへの免疫があるし、会社の中も活性化されると思う」

 -影響を受けた人物は。

 「祖父の山口藤助。天童温泉全体の将来を見据え、源泉を共同で管理し分配する仕組みを作った。個々の権利を手放させ、全体で享受しようというのは当時すごく大変だったと思う。祖父たち先人の努力があって今の天童温泉がある。それを忘れてはいけないと思っている」

 ★山口敦史氏(やまぐち・あつし) 専修大経営学部卒。1994年に滝の湯ホテル入社。常務、専務を経て2015年から社長。天童温泉協同組合理事長、日本旅館協会労務委員長、首都大学東京非常勤講師なども務める。天童市出身。47歳。

 ★滝の湯ホテル 1911(明治44)年創業。皇室ゆかりの宿としても知られ、将棋の竜王戦が指される特別室「竜王の間」も備える。屋号は「ほほえみの宿 滝の湯」。客室数89室。社員数約90人。資本金8千万円。所在地は天童市鎌田本町1の1の30。

【私と新聞】業界や地域の活性化に活用
 山口敦史社長が読者として特に目を通すのは山形新聞の地域面だ。「1面を読んだら地域のニュースを読む。『このエリアではこんなことがはやっているんだ』など、同業者の取り組みではない話題の方が仕事に役立つこともあり、新聞を読んで問い合わせたこともある」という。インターネットのニュースも活用するが、「同じニュースでも新聞を読むと深掘りされている」とも。

 山口社長は情報を発信する側でもあり、新聞をその役割を担う存在として認識している。「新しい取り組みを発信し、共有して業界やこのエリアを活性化させたい。取り組みに反応してくれた人の中から新しいコミュニケーションが生まれることもある。新聞はそういうツールでもある」と語った。

【週刊経済ワード】レオパレス21
 1973年に創業した不動産仲介業「ミヤマ」を前身とする賃貸アパート大手。単身者向けアパートの建築や物件の賃貸管理などを手掛ける。2018年3月期の連結売上高は5308億円、純利益は148億円。今年3月時点の物件の入居率は84.33%で低下傾向が続いている。施工不良問題を巡っては今年1月末時点で、1895棟の建築基準法違反が各地の自治体に確認されていた。
[PR]