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高島電機会長
井上弓子さん
井上弓子さん
【インタビュー】
 -自社の状況は。

 「事業はFA(自動機・専用機)機器、電設資材、製造の3部門からなる。主力のFA機器部門は商社として製造業者が顧客で、ニーズに合わせFA機器から電子パーツまで幅広い商品を販売する。組み立て、据え付けも担い、ものづくり現場を陰で支えている。電設資材部門は電気工事関連の商品を扱う。製造部門はグループ会社タカシマエンジニアリングが電気設備盤の製造販売、FAシステム電装盤の設計製作を手掛ける。営業マンが前面に立ち、それを支える事務職員がいる」

 -求める人材は。

 「健康、誠実、正直で働くことをいとわない人を求めている。コミュニケーション能力も大切。お客さまとの会話から課題を引き出し、それを受け取る能力、解決策を提案する力、交渉力が欠かせない。仕事を取りにいく積極性も必要で、負けず嫌いな心も不可欠。働く中で先輩や上司を見て身に付けてほしい。自分に欠けている部分を学ぶ努力も必要と考える」

 「時代の変化、ニーズを敏感に捉え、顧客満足度の高いサービス、技術を提供できる社員を育てたい。社内でも積極的にコミュニケーションを取り、目標に向かって貢献してほしい。働くことは給料を得るだけでなく、生きがい向上にもなる。これらの内容は社員心得にまとめている。若者に『働いて良かった』と思ってもらえる会社にしたい」

 -若者が社会に出る前にするべきことは。

 「社会を生き抜く力、人間力、めげない力は身に付けてほしい。それは座学だけでは身に付かず、フィールドに出て、さまざまな物を見て、体験する機会をつくってほしい」

 -入社後の人材育成は。

 「若者は会社が育てる。社内研修もあるが、社員を大手メーカーのセミナー、研修に積極的に参加させており、商品知識や技術は入社後に身に付けられる。社員はメーカー、お客さまに育てていただいている」

 -影響を受けた人物は。

 「まず2代目社長の父高島正勝、3代目社長の母しづ枝だ。父は知り合いのいない山形で20代の若さで会社を継ぎ、何もない時代だったが人材育成に力を入れ、社員に文化、教養の教育を提供した。39歳で社長となった母は何事にも物おじしない性格で、同じ女性経営者として見習う点が多い。建築家の本間利雄氏にはいつも気に掛けていただいた。山形を良くしようという考えは経営のモデルにしている」

 ★井上弓子さん(いのうえ・ゆみこ) 清泉女子大文学部卒。1996年に高島電機に取締役として入り、常務、社長を経て2011年から会長。山形商工会議所副会頭、みやぎ・やまがた女性交流機構会長、山形新聞報道審査会委員も務める。山形市出身。72歳。

 ★高島電機 1927(昭和2)年に井上会長の祖父高島又四郎氏が創業。電設資材やFA機器、制御機器、高低圧受配電盤販売などを手掛ける。グループ会社タカシマエンジニアリングも含め従業員数は約100人。資本金7千万円。本社所在地は山形市立谷川1の1059の6。酒田、南陽、仙台、神奈川県大和の各市に営業所がある。

【私と新聞】情報収集の最重要ツール
 社会人が客や取引先と商談する場合、端緒となる話題を持っていれば会話が弾む。井上弓子会長は「共通の話題を持つためアンテナを広く張り、情報収集する必要がある。その最も重要なツールが新聞」と語る。

 山形新聞ではオピニオン面や論説・解説面を好んで読み、毎週日曜掲載の「やまがたニュース解説」も楽しみにしている。「経営者としてリスクを回避するため、備えは欠かせない。新聞から学ぶことは多い」と語る。1面のコラム「談話室」も「硬軟織り交ぜて執筆され、執筆者の豊富な知識に驚く」と評する。

 最近の紙面では、退位された上皇さまのお言葉、お姿に感じるものがあったという。「ご公務に心身共に全力を注ぐお姿には、仕事上でも見習うことが多かった。私にも引き際がくるのだとしみじみ感じた」と振り返った。

【週刊経済ワード】テレワーク
 遠くを意味する「tele」と働くを意味する「work」を合わせた造語でパソコンやタブレット端末などITを活用し、時間や場所の制約なく働く勤務形態。自宅や共有オフィス、カフェなどを使い仕事をする。少子高齢化で労働人口が減少する中で、女性や高齢者の活躍を広げるほか、介護や育児との両立にも役立つと期待が高まっている。
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