NIBフロントライン

山形陸運社長
佐藤公啓氏
佐藤公啓氏
【インタビュー】
 -業界と自社の現状は。

 「1990年の物流2法の施行を契機に小規模・零細業者が全国的に急増したことで、運送料金が低下し、無理な運行が横行、給料も減り、ドライバーが減少した時代があった。当社の業績は現在、業界大手や老舗との取引が主体で安定しているが、今後の運送ニーズの変化や人手不足に対応できるように、新たな取引先・業務の開拓、倉庫業の充実を検討している」

 -力を入れている取り組みは。

 「社長に就任し、財務体質の改善に取り組んだ。ドライバー不足は業界全体の問題で、当社は人材確保と定着のために給与や各種手当てを増額改定するなど待遇改善を行ってきた。2005年ごろからは健康経営に注力している。唯一無二の資産である社員を病気や労災から守りたいと考えたからだ。建物内と運転席の全面禁煙や全社員への腰部骨盤ベルトとリストバンド式活動量計の配布、褒賞付き健康ウオーキングなどを実施している」

 -求める人材と人材育成策は。

 「特別なスキルは求めていない。常識があり、あいさつがきちんとでき、心身とも健康な人材を期待している。特別な能力を磨くことより、正直な人柄やコミュニケーション能力、体力面を重視している。特にドライバーは交通法規や業法に定められた規則を順守することが重要であり、睡眠時間やアルコールの適量摂取といった自己管理が求められる。業務スキルや事務スキルはOJT(実務を通じた訓練)に時間をかけている。特にドライバーの添乗指導や安全研修を徹底している。行動基準も定め、入社時の社内研修で指導している。年2回、全従業員と各部門の責任者が面接する。目標や自己評価だけでなく、社員の要望や意見、個人の悩みを聞き、育成や人事に役立てている。階層別に外部研修を受講してもらい、自身の役割や今後の在り方を考えてもらっている」

 -仕事上、最も影響を受けた人物は。

 「大学病院で脳神経外科の医師だった父だ。救急センターの部長を兼任し多忙だった父が生涯心掛けていた『謙虚さ』と『相手を敬う心』は、今の社会にこそ求められる重要なものだと考える。また、別業界から運送業界に入り、多くの先輩方に貴重な助言をいただいている」

 ★佐藤公啓氏(さとう・きみひら) 日本大文理学部卒。コンピューター関係のシステム販売企業で勤務後、2000年に山形陸運に入社し総務部情報企画室長。取締役、常務を経て09年より現職。東北倉庫協会連合会副会長、東北通運業連合会副会長、県倉庫協会長などを務める。前社長の半田春吉氏は義父。さいたま市出身。57歳。

 ★山形陸運 1950(昭和25)年、当時物流の動脈であった国鉄貨物を主とした通運業を軸に創業した。現在は農作物や飲料缶、セメント、石油類などのトラック運送やJRコンテナ輸送、倉庫保管業を営む。約15年前から健康経営に力を入れている。資本金9千万円。従業員数174人。本社営業所と山形南営業所があり、山形市内などにコンテナセンターやセメント石油配送センター、クリーン引越センター、倉庫を構える。本社所在地は山形市流通センター4の1の2。

【私と新聞】万人に向けた万能媒体
 「老若男女を問わず、万人が受け入れやすい万能媒体」。佐藤公啓社長は新聞をそう評価する。ネットニュースは速報性は高いものの一過性の性質が強いと感じており「新聞の方が全体像を含め物事を捉えやすく、自分のペースで文字を追えるため、客観的に判断できる」と続ける。

 山形新聞をはじめ、全国紙、業界紙に目を通す。朝は忙しく、帰宅してからじっくり読むことも。運送業界だけでなく、取引先を含めた地場産業に関するトピックは、社内でコピーを回覧し、共有する。

 山形新聞は「地元の多方面の話題が載っている点が魅力で、読み応えがある」と話し、気になるイベントやお祭りなどの記事を見つけると「来年のために、スケジュール帳にチェックしている」。

【週刊経済ワード】自動車の次世代技術
 車とインターネットがつながる接続性、事故防止に役立つ自動運転、ライドシェアなどの共同所有、電気自動車(EV)をはじめとする電動化の四つが柱とされる。それぞれの英語の頭文字を並べて「CASE」と呼ばれる。従来の車づくりの枠を超え、人工知能(AI)や情報通信技術に優れたIT企業が相次いで参入。自動車メーカーや部品メーカーの再編の動きも活発になっている。
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