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丸高社長
高橋剛氏
高橋剛氏
【インタビュー】
 -業界の現状は。

 「酒田・飽海地域の仕事量は近年横ばいだが、現在秋田県境に向けて工事が進んでいる日本海東北自動車道の整備が終われば、大規模工事がなくなる。発注減に直結する人口減少にも歯止めが掛かっておらず、ここ5年ほどで課題解決の道筋を付けられなければ手遅れになると認識している」

 -現状を踏まえ、力を入れていることは。

 「人口減少の中でも地域活性化を実現するため、市中心部に人口を集中させるプロジェクトを提唱している。コンパクトシティーなら利便性が向上し、集まった人を対象にした多様なビジネスが成立するだけでなく、公的サービスに掛かる税金も削減できるからだ。まちを、住民の考え方を根本から変えなければ人口減少に立ち向かえない。志を同じくする仲間と協議会や株式会社を立ち上げ、資金も人も自分たちで出して行動している。当社や業界が生き残るための重要事業でもある。まずは中心部ににぎわいを生もうと昨年から朝市を始めた」

 -求める人材と育成方法は。

 「技術力の高い人材はもちろん、新しい事業・改革を進めるには好奇心と意欲にあふれ、課題の分析・対策の実行・さらなる改善が自発的にできる人材が必要だ。仕事の能力向上の基礎は人間としての成長。勉強の機会とするためにも社員に論文を書いてもらっている。テーマは工法、営業交渉術の向上、定年制度の再構築などそれぞれの担当業務。論文にまとめることで課題分析力、解決能力、実行力が高まり、優れたアイデアは会社の取り組みとして採用している。仕事は“人生そのもの”になる重要な要素。会社は社員の人生を預かっているといえる。生き方(仕事の仕方)に口を出していきたい」

 -仕事上で影響を受けた人物は。

 「京セラ創業者の稲盛和夫さんが経営哲学を伝授する勉強会・盛和塾の庄内組織の発起人でもあり、稲盛哲学を学んできた。多くの教えの中でも『経営者の心を高める』ことを常に意識している。世の中のためにならない会社は消えていく。世の中のためになるには高い理念を掲げられる経営者でなければならない。組織をまとめ、物事を成し遂げるには、理念と根性の双方が必要だ」

 ★高橋剛氏(たかはし・つよし) 武蔵工業大大学院工学研究科修了。県土木部技師を経て1988(昭和63)年、丸高土建に入社。常務、専務を歴任し2009年、社長に就任。県港湾空港建設協会長、酒田地区少林寺拳法協会長などを務める。遊佐町出身。63歳。

 ★丸高 高橋剛社長の父与惣治氏が1948(昭和23)年、吹浦村(現遊佐町)で建設業を創業。酒田市若竹町を経て70年、現在の同市下安町に本社を移転した。93年、社名を丸高土建から丸高に変更。山形市と仙台市に支店を開く。土木と建築を柱に一般住宅、土地の有効利用計画策定も手掛ける。資本金8千万円、社員数130人(2月5日現在)。本社所在地は酒田市下安町41の1。

【私と新聞】地域の現状をつかむ
 社会情勢を捉えて事業展開している高橋剛社長は、世の中がどう動き、どこに向かおうとしているのかをつかむため、新聞を活用している。新聞を読むことは、自分の見方が正しいかを確認する作業でもある。「人工知能(AI)の著しい発達、米中の対立、英国の欧州連合(EU)離脱など、ダイナミックに世界と社会の仕組みが変わっていく時代。目が離せない話題が多い」と語る。

 昨年最も衝撃を受けたのは、2019年の日本の出生数が初めて90万人を割り込んだ記事。「人口減少は当然認識していたが、ついにここまできたかと驚いた」

 本紙は地域の現状をつかむ情報源。「人口減少がこのまま進んだら、この地域がどう変わるのか、具体的にイメージできるような特集があったら面白い。課題解決のために、住民の意識改革を促す役割も求められる」と期待した。

【週刊経済ワード】共同事業
 複数の航空会社が路線を一体的に運営すること。ダイヤの調整による均等間隔化や乗り継ぎ時間の短縮策のほか、共通運賃の設定といった例がある。販売戦略の連携も可能になる。相手の座席の一部を買い取り、自社顧客に売る共同運航(コードシェア)よりも深い提携となるが、実現には関係国による独禁法適用除外の認可が必要。
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