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友愛会理事長
荒井与志久氏
荒井与志久氏
【インタビュー】
 -業界の現状は。

 「福祉分野は人対人の仕事であり、人手不足が深刻だ。高齢者福祉では、2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達する『2025年問題』がある。さまざまな施策を打った上でも、県内でなお約3400人の介護人材不足が予想されている。障害者福祉分野も、病院から施設に移るケースが増えている。家族の形も変化しており、施設も福祉人材もますます必要になっている」

 -人材不足への対応は。

 「多様な人材の確保とテクノロジー(科学技術)活用の両面で検討している。人材に関しては高齢者、障害者、学生アルバイトなど全世代型の人材確保を考えている。業務を細分化して見直すと、多様な人に働いてもらうことができる。そうすることで、介護福祉士にはより専門的な仕事をしてもらえる。外国人に関しては、インターンシップ制度を活用した上で、現在はキルギスとベトナムの技能実習生4人を採用している。元々医療系の勉強をしていた人もおり、しっかり戦力になっている。さらに今後は特定技能での採用も予定しており、4月からは日本語塾を開設予定だ。25年までに全職員の10%程度の採用を考えている」

 -求める人材と育成法は。

 「求めるのは『人と接することが好き』『利用する人に喜んでもらいたい』という気持ちがある人。未経験者、資格がない人も採用しており、新入職員には1年間、『OJT(実務を通した訓練)指導者』がマンツーマンで指導に当たる。法人全体での集合研修や事業所内研修、職種別研修などもあり、十分な時間をかけて育成している。数年後の自分の姿を描きやすく、努力のしがいがあるようにキャリアアップ制度を導入。ワークライフバランスを充実させるため、家庭の状況などによって夜勤や異動がないなど、働き方を選択できるコース別人事制度も取り入れている」

 -仕事上で最も影響を受けた人物は。

 「全国身体障害者施設協議会初代会長の徳川輝尚顧問。身体障害者の施設を全国で最初に設立し、50年以上にわたり障害がある人の立場に立った支援を実践している。徳川氏に教わった『最も援助を必要とする最後の1人の尊重』『(利用者の)可能性の限りない追求』『共に生きる社会づくり』の3点をいつも心にとめている」

 ★荒井与志久氏(あらい・よしひさ) 東京で大手流通グループに勤務後、30歳で帰郷し、友愛会の法人設立に事務局次長として関わる。理事、常務理事を経て2015年から理事長。全国身体障害者施設協議会東北ブロック副会長などを勤める。社会福祉士の資格を持つ。山形市出身。57歳。

 ★友愛会 荒井理事長の父冨(すすむ)氏が1991年に創設。翌年、身体障害者療護施設「すげさわの丘」を開所した。特別養護老人ホーム「みはらしの丘」、障害者支援施設「南陽の里」など県内で10施設26事業を展開する。社会福祉法人では東北・北海道で初めてISO9001認証を取得した。従業員数は約300人。法人本部所在地は山形市みはらしの丘4の15の3。

【私と新聞】福祉ニーズを探す手段
 「『ゆりかごから看取(みと)りまで』という考えで、支援が行き届いていない部分のパズルを埋めるような仕事をしている」と荒井理事長。福祉ニーズに関する情報を新聞記事から得ることがあるという。

 荒井理事長は、本紙、全国紙、経済紙を併読している。本紙に関しては「地域に密着した記事が多く、仕事上のコミュニケーションツールとして役立つ」とする。地域の福祉へのニーズを見つける上でも活用し、地域面、経済面を含め「至る所にヒントがある」。

 例えば、同法人が運営する上山市の多機能事業所ではブドウを栽培し、ワインの生産を手掛けている。これも同市がワイン特区に認定されたという記事がきっかけだったという。

【週刊経済ワード】景気ウオッチャー調査
 地域の景気動向に敏感なスーパー店長やタクシー運転手、企業経営者ら約2000人を「景気ウオッチャー」として選定し、景気の現状や先行きを尋ねる調査。内閣府が毎月末に調査し、翌月の初旬から中旬に公表する。現場の生の声によって、地域ごとの景況感を素早く把握するのが狙い。指数が「50」を超えると景気が上向き、50未満なら下向きであることを示す。
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