NIBフロントライン

マイスター社長
高井糧氏
高井糧氏
【インタビュー】
 -業界の現状を踏まえ、力を入れていることは。

 「当社は製造業のお客さまが使うドリルやエンドミルと呼ばれる切削工具の研ぎ直しと、特注工具の製造、精密部品の受注製造を行っている。ジェットエンジン加工のためのエンドミルを共同開発しているほか、髪の毛より細いコイルばねを作る際のワイヤガイドは当社でしか作れない。またスマートフォンの画面を作るための刃物を、相手先ブランドによる生産(OEM)で作っている。取引先は自動車、半導体、航空機、医療機器などのメーカーや食品工場など約400社だ」

 「受託加工は世界の経済情勢に左右される。昨年は国内メーカーの工作機械生産高が減ったが、当社の強みは量産ではなく一品物を作ること。相手企業と開発や設計を一緒に行い、時間短縮や精度向上を提案する。当社の営業は製造現場と生産管理を経験した上で担当している。技術者目線でお客さまの苦労と工夫が分かるので改善ができる。今後は特に医療、航空機、ロボット分野に力を入れたい」

 -求める人材と育成法は。

 「幅広い人材が多様な考え方をすることで、相乗効果を生み、当社のアイデンティティーを保つと考えている。加工にしても、異なる視点から見て解決策を考える文化がある。当社従業員の3分の1は女性であり、例えばダイヤモンドの刃先研磨は繊細さと忍耐力が必要で、女性の特長が出る。だが、仕事で男女別を意識はしない。人材育成として、入社3年以内の各種技能検定合格を目指し、先輩が指導する。技能をきちんと伝えるようにしている。研修会や発表会、社外見学も積極的に実施している。当社従業員の肝は『自ら気付いて動く』こと。これを楽しむことが会社の推進力となる。そして楽しむためには、基本技術と知識が必要だ」

 -仕事上で最も影響を受けた人物は。

 「山形大大学院の志村勉教授(現山形大工学部産学連携教授)だ。講座を受講し『良いものであれば売れる』との作り手視点ではなく、お客さまが本当に求めているものを深いところまで知る必要性と大切さを学んだ。創業者で代表取締役会長の父・作からは好奇心を持ち仕事をする姿勢を学んでいる。その姿を間近に見て大きな影響を受けた。今でも『こんな面白いものがある』と仕事を持ってくる。楽しむことが何よりも大事だと気付かされる」

 ★高井糧氏(たかい・りょう) 都内の団体と岐阜県の超精密研削盤メーカーでの勤務を経験し、職業能力開発総合大学校(東京)を修了。2009年に入社し技術者となった。品質保証部長、常務を経て19年9月から社長。河北町出身。39歳。

 ★マイスター 高井社長の父・作(つくる)氏が河北町で1976(昭和51)年、金型設計で創業し、80(同55)年に切削工具再研磨を中心に行う「タカイ工機」を設立。88(同63)年に寒河江市に移り、ドイツのマイスター制度の考え方から社名を「マイスター」に変更。2008年に同市中央工業団地に移転した。13年に経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」で表彰。市内に2工場、横浜市に営業所を持つ。資本金3600万円。従業員83人。本社は寒河江市中央工業団地156の1。

【私と新聞】情報のバランスが取れる
 毎朝、自宅で山形新聞を読むという高井社長。「まず1面を見て、続いて経済面と地域面を読む。それから2面に戻って、順番に紙面をめくっていく」と自らの読み方を紹介する。

 関心が強い分野は経済や国際情勢など。こうしたニュースは新聞のほかテレビやインターネットでも見るが、新聞ならではの利点を感じている。「ネットで知るニュースは自分が関心を持つ分野だけになりがち。しかし新聞にはミクロからマクロまで、地域から世界までの情報が掲載されている。情報のバランスを取ることが自分にとって必要」と笑顔で話す。

 ニュースだけではなく、多様な意見を学ぶ上でも新聞は役に立つと語る高井社長。「いろいろな考え方に触れるために、社説も読むようにしている。勉強になる」とし、「新聞は自分を成長させるもの」と位置づけて活用している。

【週刊経済ワード】減産監視委員会
 サウジアラビアをはじめとした石油輸出国機構(OPEC)加盟国と、ロシアなど非加盟の産油国による連合体「OPECプラス」の協調減産の取り組み状況を確認する組織。定期的に閣僚級会合を開催して各国の生産状況を点検する。生産抑制の取り組みが原油相場の動向に及ぼす影響を分析し、必要な減産量も協議する。
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