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JAみちのく村山組合長
折原敬一氏
折原敬一氏
【インタビュー】
 -農業の現状を踏まえ、JAとしての役割は。

 「生産者の高齢化や後継者不足による耕作放棄地の拡大など、農業現場を取り巻く環境は依然として厳しく、課題は山積している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う農業分野へのひずみも生じている。JA単体としても安全で安心な農畜産物を持続的・安定的に供給できる地域農業を支えながら、農業者の所得増大と農業生産の拡大、元気な地域社会づくりを実現するため全力で取り組んでいる」

 「新規就農者を獲得し、担い手を増やすことも重要だ。若者が魅力を感じる農業、生産者が豊かさを実感できる農業の実現を目指し、生産基盤の強化が欠かせない。夏スイカ生産量日本一を誇る『尾花沢すいか』や、肥育頭数が県内一で東北有数の産地である『山形牛』のブランド力向上と販売力強化に努めている。組合員あってのJA。『一人は万人のために、万人は一人のために』の理念に立ち返り、組織機能の充実、組合員との関わりを大事にする姿勢が必須と考える」

 -どのような人材を求めているか。

 「1粒の種子をまけば実って万倍の収穫を得るという意味の言葉『一粒万倍』は稲の異名だが、わずかなものから多くの利益が上がる。わずかなものでも粗末にしてはいけない。先を見据え、どうすれば農業の生産振興を図れるのかを考え、行動する人物を求める。組合員の声に耳を傾ける力、伝える力、自己表現力を養っていかなければならない。いわば地域に密着した営業マンに徹するべきだと考えている。専門知識やスキルは大事だが、組合に入った後でも身に付けられる。先輩や同僚と情報を共有できる心の広さも肝要。日々の体験を積み重ねれば成長する」

 -影響を受けた人物は。

 「多くの人に支えられているが、その中であえて言えば両親から影響を受けた。2人が営んでいた農業への情熱、人間関係を大切にして作業している姿を目の当たりにしてきた。父は先見の明があり、新たなことにチャレンジする力、失敗を恐れない気概を持っていた。さまざまなことを経験した父の背中を見て、どんなことでも全力で取り組む大切さを学んだ。その生きざまは見習いたいし、尊敬に値する。また高校時代、入部していたスキー部の監督にはよく叱咤(しった)激励を受けた。感謝している」

 ★折原敬一氏(おりはら・けいいち) 新庄北高卒。1973(昭和48)年、尾花沢市農協に入組。2008年に退職後、現在のJAみちのく村山代表理事専務に就任、17年から代表理事組合長となる。県農業協同組合中央会副会長も務める。尾花沢市玉野地区出身。67歳。

 ★JAみちのく村山 1995年に村山、尾花沢、大石田2市1町の3農協が合併。水稲・園芸・畜産を主力とし本年度、合併25周年を迎えた。「活気ある地域農業を協同の力で次世代へつなごう」のスローガンの下、事業展開を進める。2019年度の販売品取扱高は154億810万円。組合員数1万2085人、役職員数計380人。本店所在地は村山市楯岡北町1の1の1。

【私と新聞】素養を高める教科書
 「山形新聞は地域情報が簡単明瞭に書き込まれており重宝している」と語る折原敬一組合長。毎朝5時に起床し、1面から社会面まで隅々まで読むことから一日が始まる。

 業界紙や全国紙にも目を通すが、国内外の幅広い情報、県内の動きを知るためには「山形新聞を読むことをルーティンに組み入れるといい」と説明する。組合員や職員とのコミュニケーション、情報共有にも活用している。

 長く愛読しているため、紙面全体の構成は全て把握しているという。特に社説や直言、提言、解説記事を参考にしており「腰を据えた論評も多く、見解や視点は参考になる。私にとって素養を高めるための教科書かな」と笑う。「きめ細かな情報こそ山新のアピールポイント。もっと地域の話題を提供してほしい」と期待を寄せる。

【週刊経済ワード】デジタル改革
 行政や民間のデジタル化を促進することで業務効率化やサービス向上につなげる取り組みで、菅政権が看板施策に掲げる。司令塔機能を担う組織として「デジタル庁」を来年新設することが柱で、IT基本法の改正なども視野に入れている。新型コロナウイルス対応では、給付金支払いを巡る混乱や、各省庁間のシステム連携の不具合が相次いで露呈した。国のシステム関連予算の一元化や、自治体システムの統一などにより、安定運営や保守費用削減を目指している。
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