NIBフロントライン

山形メタル社長
庄司正人氏
庄司正人氏
【インタビュー】
 -業界の状況は。

 「わが社は売り上げ全体の6割が金属製の建築用内外装パネルなどの建材部門。全国の駅や地下鉄、空港、公共施設向けが中心だ。残りの4割は建設機械や工作機械関連。建設分野は東京五輪に伴う特需後、新型コロナウイルス禍の影響を受けたが、ここへ来て首都圏は需要が戻りつつある。わが社も少しずつ受注は入っており、今年下期が底ではないか」

 -環境の変化や不況に耐えるための戦略は。

 「中小企業はコスト競争をしていては生き残れない。正当に評価されるよう商品、技術を差別化することが必要だ。わが社は外壁材のコーティングの新技術を確立するなど、より付加価値の高い商品の開発を常に目指している。大手にはできないオンリーワンの商品で競争力を高め、収益を確保する。そうしないと企業は淘汰(とうた)される。将来展望を描けなければ新たな人材も確保できない」

 -求める人材は。

 「やる気のある人だ。存在感を示し、自分を誇れるような人間になってほしい。やる気のある人には中小企業大学校などの外部の教育機関で学ばせ、チャンスを与える。達成感を味わい、仕事が面白いと思ってもらえるような人材教育に取り組んでいる」

 -若い人材の確保は難しくなっている。

 「新庄中核工業団地立地企業協議会長として団地内企業の従業員向けの保育園を2018年に開設した。自分は農家の生まれで、出稼ぎを経験した。出稼ぎはしたくないと思い、20代前半で創業した。今、若者の地元定着は最上地域にとって大きな課題だ。この地域を次世代に引き継ぐには各企業が収益を上げ、若い人が地元に残って働きたいと思うような環境づくりを進めることが重要と考える」

 -影響を受けた人は。

 「03年に取引企業を統合した。反対もあったが、飛躍のチャンスだと思って決断した。その時、メイン銀行の役員から『真水で商売しろ』と言われた。『真水』は見せかけではない本当の姿という意味。利益を考えずに売り上げだけを膨らませてはいけないとの教えだ。収益性重視という商売の本質を捉えている。今でも心に留め、教訓にしている」

 ★庄司正人氏(しょうじ・まさと) 新庄農業高を卒業後、首都圏に出稼ぎに行き、自動車の部品製造やガードマンなどに従事した。1974(昭和49)年に山形メタルの前身となる音響部品製造「大滝電機」を創業。経営トップとして業容を拡大させてきた。真室川町出身。70歳。

 ★山形メタル 1995年8月に大滝電機から社名を変更。主力の建築用パネル製造部門ではスカイツリーの展望台の内壁も手掛けた。従業員は127人(今年4月現在)、同3月期の売上高は11億8千万円。資本金9千万円。東京都内に東京営業所、神戸市に関西営業所を置く。本社所在地は新庄市福田字福田山711の17(新庄中核工業団地)。

【私と新聞】経営判断の材料に
 庄司正人社長は「世の中の状況を知る上で新聞は欠かせない。何が起きているかを知り、情報を得ることは経営判断の材料になる」と語る。毎朝自宅で山形新聞を手に取り、まず1面で主要ニュースを確認する。経済面で企業動向を把握した後、おくやみ欄、新型コロナウイルス関連記事などに目を通すという。
 工業系の専門紙で業界動向のチェックも欠かさない。注目するのは材料や素材の価格変動、相場の動きが中心だ。「ネットニュースも見るが、やはり紙の方が見やすい」と話す。
 若い社員には「新聞の1面トップ記事は毎日必ず読むように」と伝えているという。「新聞を読まない人が多くなっているが、その日一番のニュースや出来事を知らなければ恥ずかしいし、人と接する際に話に付いていけなくなる。新聞を活用してもらいたい」と呼び掛ける。

【週刊経済ワード】投資減税
 企業が生産設備を更新したり、新分野の研究開発を始めたりした場合、費用の一部を法人税額から差し引く政府の優遇策。技術や製品の開発を後押しし、日本経済の成長につなげる狙いがあり、多くの企業に適用されている。脱炭素化の効果が高い先進的な投資を促す「カーボンニュートラル投資促進税制」や、高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムが対象の「5G導入促進税制」などがある。
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