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多田社長
多田丈弘氏
多田丈弘氏
【インタビュー】
 ―業界と自社の特徴は。

 「当社は寒河江市を中心に介護事業、フィットネスジムと保育園の運営などを行う。多田グループとしては、社会福祉法人すばるが特別養護老人ホームなどを運営し、タクシー2社、呉服卸の多田商店がある。現会長で父の多田恵一が市内のデイサービス事業所を引き継ぎ福祉事業に参入した。介護業界は自立支援が重要とされているが、手助けをし過ぎて要介護度が重くなる事態も見られ、目標と現実にはギャップがある。当社は約10年前にリハビリに特化すべくかじを切った。要介護度の維持改善率を上げ、健康寿命延伸に力を入れている」

 「昨年4月には市内栄町にジム、保育園、短時間デイサービスのリハビリセンターVESTA(ベスタ)を組み合わせた複合施設を開設した。VESTAは明るくおしゃれな北欧風にし、利用者は園児が外を歩く姿を見て和んでもらえる。メニューは理学療法士、言語聴覚士の専門家が介護福祉士と一体となり考える。この新施設の維持改善率は90%以上。改善し卒業したらジムで運動ができる仕組みだ。要介護の一歩手前のフレイル(虚弱)の予備軍を改善する狙いもあり、ジムの70歳以上向けフレイル教室は送迎付き無料で利用できるようにしている」

 ―求める人材と育成法は。

 「明るく元気で素直、好奇心がある人を求めたい。日々の業務が作業化してはいけない。相手に関心を持つことが必要だ。当社では、全員が活用できる手帳式の経営方針書を作り、各自が共通認識を持ち、納得して仕事ができるようにした。これを基に現場では自ら考え実践して成長し、介護のプロになり活躍を楽しんでもらいたい。介護業界の担い手は、困っている人を助けたいと考えるすてきな人。従業員を幸せにすることが大切だ。保育園は従業員が退職せずキャリアを積み安心して働けるよう設けた。近年の当社離職率は2%と低めになっている」

 ―仕事上で影響を受けた人物と、その教えは。

 「やはり父の恵一だ。私は東京でのサラリーマン生活から寒河江に来て経営者になった。不安だったが『経営者として決めるのはお前だ』と言われ育ててもらった。また、お客さまのためになるものを売る―という商人の視点を介護事業に持つことができた。多田グループ全体として社員の幸せ、お客さまの幸せ、会社の永続の『三方良し』を保ち、成長し続けたい」

 ★多田丈弘氏(ただ・たけひろ) 群馬県中之条高、東京農業大農学部卒。都内の財団法人研究員を経て2006年、多田商店に入社し常務就任。福祉事業を行う多田では14年5月に社長に就いた。群馬県出身。クレー射撃競技で本県の国体選手を務めた。44歳。

 ★多田 呉服卸・不動産業の多田商店が、寒河江市内の福祉事業企業を引き継いで2010年に名称変更した。同市内でデイサービス、保育園、フィットネスジムなど7事業所と、山形市で1事業所を展開する。資本金2千万円。本社所在地は寒河江市栄町8の41。多田グループは他に特別養護老人ホームなど3事業所を運営する社会福祉法人すばる、中央タクシー、寒河江タクシー、多田商店がある。グループ全体の従業員数は176人。

【私と新聞】紙の発行、続けてほしい
 多田丈弘社長は毎朝、自宅で山形新聞と全国紙を読むことを日課にしている。土地勘のない本県に来て16年。「知り合いが紙面に載る」と山形新聞を手に取り、重要な情報ツールとして活用している。
 1面は記事に目を通し「談話室」を熟読する。「新聞の作り手の意思を感じる。文章も勉強になる」とうなる。ニュースで気になるのはやはり新型コロナウイルス関連。世界各国の動向や治療薬開発状況も注視する。地域版も注目のページで「地域の活動を、深く温かく紹介してほしい」と変わらぬ期待を語る。
 何より新聞は紙の媒体という点が好みという。「指で紙をめくり、ペリペリという音を聞き、紙の匂いを感じることが習慣になっている。インターネットと違い行動と感覚を伴うのがいい」。笑顔を見せ、紙の新聞を続けてほしい―と強調した。

【週刊経済ワード】電波の割り当て
 有限で国民共有の財産である電波を公平かつ有効に利用するため、総務省が電波法に基づき事業者への割り当てを管理している。電波はテレビやラジオの放送、携帯電話、警察無線、自動料金収受システム(ETC)などさまざまな用途に使われ、伝送できる情報量や距離は周波数によって異なる。携帯電話では建物内でも届きやすいことが重視され、最適な周波数はプラチナバンドと呼ばれる。
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