NIBフロントライン

タカハタ電子会長
安房毅氏
安房毅氏
【インタビュー】
 -部品調達が難しい状況が続く。自社の現状は。

 「当社が手掛ける全ての分野で部品が不足し、価格も暴騰している。製品の仕分け作業を効率化する自社開発のデジタルピッキングシステムは、総動員で部品集めをし、物流センターオープンの2日前に納入したこともある。まさに時間との闘い。50年ほどこの仕事に携わり、このようなことは初めてだ。厳しい状況だが、道を模索しなければいけない」

 -その中で力を入れる分野は。

 「会社の歴史の中で良い時もあれば大変な時もあった。そうした経験から売り上げ至上ではなく、収益力を上げようと取り組んできた。今特に力を入れるのは自社ブランドのデジタルピッキングシステム。食品メーカーなどの物流の現場で導入されている。取引先の支えもあり、当社を育ててくれた分野だ。人手不足に加え、納期が短くなる中で、ニーズが高まっている」
 「売り上げの3分の2を占める受託製造の分野は、半導体装置や医療機器などいくつかの仕事をコントロールしながら操業度を維持している。どのような業界にもアップダウンは必ずあるので得意先は常に拡大して良い関係をつくっていくことが大事だ。恐れていたら事業は継続できない。今後も身の丈に合った形で新しい市場に挑戦したい」

 -求める人材は。

 「人の力は環境の中で備わっていくもの。自分に足りない点を素直に認め、人に教わったり、力を借りたりしていくことが大事。まずはそういうことができる環境に入っていくことだ」

 -社員を育てるため心掛けてきたことは。

 「会議などで『AWA NOTE』と題した資料を配っている。会社の現状とともに、私が考えていることや感銘を受けた言葉を伝えてきた。社員は家族と考える。職場をよくするため、上下関係を気にせず気付いたことを言えるように社員に声を掛けている」

 -最も影響を受けた人物は。

 「元シャープ副社長の佐々木正さんだ。開発途上の製品を見てもらい、叱られたことがある。その際、『商品の価格は機能+情緒』と教わった。情緒はデザインや使い勝手、アフターフォローなど、つまりは人の心を大事にするということ。製品は多くの人の手が交わって完成するものであり、社員は家族という考えにもつながっている。若いころから多くの人と出会い、もらった言葉をその都度心に留め、それをきっかけに自分を見つめ直してもきた」

 ★安房毅氏(あわ・つよし) 米沢商業高卒業後、京都の電機メーカーに就職し、21歳の時に高畠電子(現タカハタ電子)に入社。常務を経て1990年から社長を務めた。2018年から現職。県中小企業団体中央会長も務める。高畠町出身。75歳。

 ★タカハタ電子 前身は安房会長の叔父正雄氏が創業した高畠電子。タカハタ電子はシャープの出資を受けて1974(昭和49)年に設立。37インチ以下液晶テレビ製造を一手に引き受けた。半導体や医療分野などの電子機器の受託製造を手掛ける一方、物流システムなど自社ブランドの開発にも力を入れる。資本金1億円。社員数187人。米沢市に子会社・高陽電子がある。本社所在地は米沢市窪田町窪田1188。

【私と新聞】地元の動き、把握が大事
 安房会長は毎日、山形新聞と経済紙を読むのが習慣という。見出しで気になった記事は詳しく読み、切り抜いたり、管理職とメールで共有したりしている。
 取引先を含め人と会う機会が多い。「地域のことは知っておかないといけない」と、特に本紙に関しては、県議会のやりとり、県内の経済の動き、コロナの感染状況、お悔やみ欄など、しっかり目を通す。「こちらから話題を提供したり、何か尋ねられた際にすぐ答えたりできるよう、地元の動きをくまなく把握しておくことは大事」と安房会長は話す。
 日々目を通していると、見出しを見るだけでニュースの概要も分かってくるという。

【週刊経済ワード】ガスプロム
 天然ガスを採掘から供給まで行うロシア政府系企業で、世界最大級の天然ガス会社。2020年には全世界の天然ガス埋蔵量の16%を所有し、生産量は世界の11%に上った。ガスを各地に輸送するパイプライン17万6000キロを所有。ロシア極東から西欧まで敷設され、欧州には供給網が張り巡らされている。日本にも極東サハリンから液化天然ガス(LNG)を供給している。(共同)
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