NIBフロントライン

キクノ社長
菊野政治氏
菊野政治氏
【インタビュー】
 -業界、自社の現状は。

 「世界的なプラスチックごみ削減の潮流があり、包装業界は転換期だ。スーパーでは自主導入が先行していたが、2020年7月に全国の小売店にプラスチック製レジ袋の有料化が義務付けられ、レジ袋の売り上げ枚数は10分の1に激減した。さらに今年4月からスプーンやフォークなど使い捨てプラスチック製品を多量に提供する企業に削減対策が義務づけられ、紙袋、木のスプーン・フォークへの転換が進んでいる。イベント、祭りが軒並み中止となり、この分野の売り上げも急落。当たり前に売れていたものが売れなくなり、商品動向が激変している」

 -一方で新型コロナウイルス禍ではテイクアウトの容器需要が高まった。

 「飲食店の来店者が激減する中、食品容器をはじめ手袋、消毒液の需要が急増した。全国で供給不足になり、確保に追われた。コロナ禍では人との交流も自粛されたため、贈り物が増え、インターネット通販の企業からギフト包装の受注が増えた。本県の高品質な果物や食材の人気を痛感した。当社は化粧箱一つから顧客ニーズに応じて包装を提案・開発している。こんな時だからこそ、おいしい・すてきな商品を届けたい、家族や友人に喜んでもらいたいという、お客さまの思いを届けられる提案に一層力を入れた。紙皿や紙コップも、場を明るくしたいというお客さまを手助けできればと、色・柄付き商品を増やした。新しい商品を入れると新しいお客さまにも来ていただけ、山形市内2店舗には合わせて年6万5千人超の来店がある。ネットで何でも買える時代にうれしい反応だ」

 -求める人材は。

 「元気で健康で、何より、よく話を聞ける人だ。当社の強みは商品一つから対応できること。だからこそ、お客さまが何を求め、箱・包装に入れる商品にどんな思いを込めているのか、引き出して聞く姿勢が重要。主役はあくまで箱・包装に入れる中身と、お客さまの思い。それを思いやりをもって包むのが私たちの仕事だ。聞いた上で社内で検討し、お客さまとともに考え、形にしていく」

 -仕事上、最も影響を受けた人は。その教えは。

 「創業者で、企業姿勢を築いた父だ。『創意工夫と開発の炎』『人の話はよくキクノ キクノが一番』という父の言葉を、今も名刺に入れている。その姿勢の大切さを家族も従業員も理解できたから、商売を続けられているのだと思う」

 ★菊野政治氏(きくの・まさはる) 日大山形高出身。仙台市内のデザイン専門学校を卒業後、全国に包装資材店パッケージプラザを展開するシモジマ(東京)に入社。30歳のころにキクノに入社し、専務を経て2021年に社長就任。3月まで山形商工会議所青年部会長。45歳。

 ★キクノ 1972(昭和47)年、菊野政治社長の父浩司(ひろし)氏(故人)が創業。96年、パッケージプラザグループに加盟し、山形市の七日町4丁目と馬見ケ崎3丁目に2店舗を運営する。菓子箱を中心にした箱の製造や、紙袋、包装紙など包装用品、店舗用装飾品、販売促進用品、文具事務用品の販売も手掛ける。資本金1600万円。従業員18人。本社所在地山形市七日町4の14の5。

【私と新聞】絶対必要な情報収集手段
 県内に戻ってから山形新聞を読み始めたという菊野政治社長。きっかけは取引先企業の社長から「今日の山新、読んだ?」と聞かれたことだった。この日の紙面に取引先企業の記事が掲載されていたのだ。
 都市部で働いていた頃の情報収集はインターネットが中心だった。「ネットに県内ニュースはほとんど載っていない。県内経営者の方々とコミュニケーションを取るために絶対に必要な情報収集手段。営業ツールでもある」と語る。
 県内の企業や産業の新しい取り組み、自治体の施策、地域の話題、おくやみ欄と幅広く目を通す。特に読み込むのが県内の各業界の現状や経営者の考え方を知ることができるNIBフロントライン。「そこに自分が掲載されるなんて、不思議な気持ち」と笑った。

【週刊経済ワード】経済産業政策の新機軸
 産業界や企業を幅広く所管する経済産業省が、時代の変化に見合うとして策定した産業政策の在り方。企業が経営戦略を作る際の指針となることを目指す。脱炭素社会の実現といった社会課題の解決と、戦後から続く日本型雇用制度など従来のシステムの見直しを柱とした。官民連携で取り組み、国際競争力が高い経済社会の実現を目指す。
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