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吉田畜産社長
吉田昌永氏
吉田昌永氏
【インタビュー】
 -畜産業界の現状は。

 「ロシアのウクライナ侵攻を受けて飼料価格が高騰し、畜産農家の経営に影響が出ている。高齢化が深刻で後継者不足にも直面し、将来の仕入れ先がなくなるのではと不安だ。業界を盛り上げるため、消費者に最も近いわれわれが食肉の重要性をPRしたい。2017年からブランディングに着手し、『日本一かっこいいお肉屋さん』を目指すなどさまざまな取り組みで肉店を活気づけ、若者の畜産業界への関心を高めたい」
 「国内では牛肉は6割、豚肉は5割を輸入に頼る。そのため価格は国際情勢や為替相場に影響され、不安定要素を抱える。海外との競争にもさらされ、地球規模の人口増加や異常気象による穀物不足もある。国内での耕畜連携による飼料作物の増産が急務だ」

 -求める人材は。

 「まず肉が好きであることで、学歴や成績は関係ない。素直でやる気があり何でも吸収し、何事にも前向きに取り組むことが大切。社員に長く勤務してもらうためには仕事する意味を理解することが必要。それには経営理念の浸透が重要と考え朝礼で唱和し、毎週土曜日にはクレド(お客さまとの約束)を読み上げ、私たちが仕事できるのはお客さまのおかげということを確認している」

 -どんな努力が必要か。

 「仕事は単にお金を目的にするのではなく、楽しんでほしい。お客さまが自分の作った商品で笑顔になる喜びを感じてほしい。感受性が豊かで、人のために何かするのが好きな人になってほしい。学生は将来の夢につながるアルバイトをしていただきたい。社会勉強になり、お金では手に入らない経験を得られる。今はその経験が点にしか思えないかもしれないが、後で振り返るとそれが線になり、いつか面になる。どんな経験も必ず自分の宝になる」

 -影響を受けた人物は。

 「1人には決められないが、あえて言うなら祖父の故吉田吉三郎だ。子どもの頃は祖父について回った。祖父と業者や顧客との交渉の様子は勉強になり、面白かった。今も役立っている。祖父はお客さまの困り事を見つけて解決することが得意だった。あまり利益に結び付かなかったと思うが、お客さまのため手間を惜しまず加工し、売れる商品を作っていた。頭ではなく心で仕事をしていた」
 「お客さまから教えてもらうことも多い。時間帯によって売れる商品が違い、売れない原因を探ろうと、お客さまに聞いたり行動を観察したりし、陳列方法を変えることもある。お客さまに喜んでもらうために何をすれば良いかを常に考えており、それが面白いところでもある」

 ★吉田昌永氏(よしだ・まさなが) 山形東高、小樽商科大商学部卒。米ユタ州立大イースタン校への留学を経て、住友石炭鉱業(現住石マテリアルズ)スーパーマーケット事業部で勤務。1997年に家業の吉田畜産に入社し、専務を経て2017年から社長。山形市出身。50歳。

 ★吉田畜産 1912年に山形市城南町で創業。農家や畜産業を営み、53(昭和28)年に株式会社化。54年に城南町で精肉店を始め、山形駅前でも精肉店を開いた。78年に同市城南町3丁目で食品スーパー「ショッピングセンター吉田」をオープンさせた。今年6月にショッピングセンター吉田を全面リニューアルし、総菜コーナーをライブキッチンにして出来たてを提供するなど生まれ変わった。社員数は36人。資本金1千万円。本社所在地は山形市城南町3の7の40。

【私と新聞】世の中の事、一気に分かる
 吉田昌永社長は普段、新聞を斜め読みし、目に留まった記事に目を通す。特に仕事に関連する記事はじっくり読み込む。「新聞は世の中で何が起きているか把握できる最良のツール。世界、日本、地域の今の情報が一気に分かる」とする。
 さらに、新聞には幅広い分野のニュースが掲載されるため、「自分の知識のなさを実感させてくれるツール」と語る。分からない情報に出合うと、高校時代に使っていた歴史や公民の参考書、教科書を引っ張り出し、調べることもある。新聞によって論調の違いがあるため、「何紙かを読み比べるのも面白い」という。
 インターネットも情報収集に便利で、隙間時間にスマートフォンでニュースを読むことがある。だが「ネットはニュースが次々に出てきて、情報過多のため時間を無駄に浪費する恐れがある。そうならないように、なるべく紙を読むようにしている」という。さらに「新聞は掃除など多目的に使え便利だ」と笑う。

【週刊経済ワード】消費者物価指数
 消費者が購入する商品やサービスの価格動向を示す指数。米国では労働省が毎月発表しており、食料品やガソリン、住居費といった生活に身近な品目の値動きが対象となっている。新型コロナウイルス禍からの経済活動再開に伴い物価高が加速。ウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁の長期化がエネルギーや食料価格の高騰に拍車をかけている。(ワシントン共同)
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