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ねぎびとカンパニー社長
清水寅氏
清水寅氏
【インタビュー】
 -業界の現状は。

 「農業、特にネギ生産販売の世界は今、変わりかけている。新型コロナウイルス感染などの影響で一時流通が止まり、中国からの品が入って来なくなった。このため単価が上がり、国内で新規参入する農家が増加。呼応するように農業機械が進化し、より浸透した。そうなると、例えばこれまで3人で作っていた量が1人、4人で作っていたのが2人で済み、2時間かかっていた作業が30分で終わるということになる。供給力が上がるため、今度は単価が下がり、それを補おうとして栽培面積を増やす。国内のネギ農家はかなり増えていて、大規模化も進んでいる。ただ、作物は機械や資材で作るわけではなく、技術、腕が必要。自分のやり方を常に見つめ直し、腕を磨くことを心掛けている」

 -求める人材は。

 「こちらから何かを求めるという姿勢でなく、志望してきた人にはどんな能力があるのだろうと考えるようにしている。どんな人でも絶対に何かしらいいところを持っている。それがわが社の仕事に合っているかどうか。そしてその才能を私たちが見つけられるかどうかが大事だ。さらに、野球にピッチャーだけでなく捕手や野手が必要なように、さまざまな仕事に合うそれぞれの人材がいないといけない。1人で何でもできる人は貴重だが、その人が休んでしまうとフォローできないから。最近はライフスタイルの変化で、働ける時間が限られた人が多く、そういった人の中に才能を持つケースもある。一律に8時間働ける人だけを募集するのでなく、例えば4時間ずつ2人でもいいと思う。教育する時間が倍にはなるが、徒競走と同じで短距離なら全力で走れる。教える方も上手になる」

 -影響を受けた人物は。

 「JAてんどう組合長の金平芳己さんには間違いなく影響を受けている。いろんなことを聞くと、いつでも『待っとけ。今行く』と言って飛んで来てくれて、技を教えてくれる。しかしそれだけではなく、尊敬もするが不思議と『負けたくない』と思わせてもくれる。また、人物とは言えないが、いろんな会社を視察する際、あまりに高い理想を掲げると無理が生じるだろうなと感じる時もある。これも影響を受けるという意味では同じ。最低限のラインをしっかり守っていきたい」

 ★清水寅氏(しみず・つよし) 長崎県の瓊浦(けいほ)高卒業後、金融系の会社に就職。25歳で営業のトップを経験し、グループ7社の社長を務める。2011年に妻の実家の天童市に移り住み、農業を始める。ネギ栽培と販売に取り組み、15年に8本1万円、19年には1本1万円の商品を発売、発表した。19年に県ベストアグリ賞農林水産大臣賞受賞。全く新しい職業と位置づけ「初代葱(ねぎ)師」を名乗る。41歳。

 ★ねぎびとカンパニー ネギ、ネギ苗、タマネギ苗、ホウレンソウの生産、販売、肥料販売などを手掛ける。2014年9月に設立。120カ所に計9.5ヘクタールの畑を持つ。資本金100万円、従業員40人。本社所在地は天童市蔵増字宮田4389の1。

【私と新聞】暮らしに根付いている
 新聞とは、の質問に清水寅社長は「毎日の忙しい生活の中で、貴重な時間をくれるもの」とまず一言。朝の時間帯に読むことが多く、「日々の暮らしになじんでいて、なぜか無理なくすっと入り込んでくる。ルーティンの一つになりえる唯一の紙媒体なのでは」とも。
 新聞を読んでいるときは時間が止まるように感じるそうで、どんなに忙しくしていても、コーヒーを飲みながら文字を追っていると、気持ちが落ち着いてくる。そしてまた仕事に戻れる。書かれてある内容はどうあれ、安心感を与えてくれるという。そんな媒体が月1回でも週1回でもなく、毎日発行されていることに、作る側の努力が見えるという清水社長は「歯磨きと同じように、人々の暮らしの中にしっかり根付いている」ときっぱり。購読は「とてもやめられない。毎日ありがとうと言いたい」と話している。

【週刊経済ワード】法人企業統計
 国内企業の活動実態を把握するため財務省が実施する調査。売上高や経常利益などを業種や資本金別に集計する。景気の先行きに対する企業の見方を示す指標として、設備投資の動向が特に注目される。結果は内閣府が発表する国内総生産(GDP)の改定値に反映する。3カ月ごとの四半期別調査と年1回の年次別調査がある。
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